ブルーベック(読み)ぶるーべっく(その他表記)Dave Brubeck

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ブルーベック」の意味・わかりやすい解説

ブルーベック
ぶるーべっく
Dave Brubeck
(1920―2012)

アメリカのジャズピアノ奏者。本名デビッド・ウォーレン・ブルーベックDavid Warren Brubeck。カリフォルニアコンコードに生まれ、サクラメント近郊に移住。4歳でピアノを弾きはじめる早熟ぶりをみせ、13歳でディキシー・バンドに参加。パシフィック大学で音楽を専攻し、自ら12人編成のバンドを結成した。

 1941年、オークランドのミルズ・カレッジに移り、フランス人作曲家ダリウス・ミヨーに作曲法を学ぶ。途中兵役に就きながら、在米中のオーストリア人作曲家アルノルト・シェーンベルクに作曲法を学び、除隊後は再びミヨーについた。1946年実験的オクテット(8人編成)を結成、翌1947年ピアノ・トリオに編成を縮小、その後再度オクテットに拡大した。1950年、オクテット時代からつきあいのあるアルト・サックス奏者ポール・デズモンドPaul Desmond(1924―1977)とカルテットを結成。このころからラジオ局KNBCのディスク・ジョッキーで、後にモントレー・ジャズ・フェスティバルを創設したジミー・ライオンズJimmy Lyons(1916―1994)に気に入られたびたび出演、これがもとで全国的に人気が広まり、ファンタジー・レコードへのレコーディングを行った。

 1953年オハイオ州の名門校オバーリン・カレッジ内で開かれたコンサートに出演し、この模様がアルバム『ジャズ・アット・オバーリン』Jazz at Oberlinに収録された。それまで大学内でジャズのコンサートが開かれることはまれで、これをきっかけにして学生の間でブルーベックの人気が沸騰以後シンシナティボストンミシガン、オハイオなどの大学内でコンサートを開催、いずれも好評でレコーディングも行われた。

 1956年ドラム奏者にジョー・モレロJoe Morello(1928―2011)を起用、1959年変拍子による曲目を集めたアルバム『タイム・アウト』を出すが、そこに収録された5拍子の曲「テイク・ファイブ」が大ヒットした。このカルテットは1967年まで続き、ジャズ誌人気投票で常時上位を確保した。1968年、バリトン・サックス奏者ジェリー・マリガンと双頭コンボを結成、1971年までこのグループで活動。1976年、デズモンドとのカルテット結成25周年を記念してオリジナル・メンバーが再結集し、全米をツアー、かつてのファンから温かく迎えられた。1987年(昭和62)、日本のテレビCFに「テイク・ファイブ」が使われ、リバイバル・ヒットした。そのほかの代表作に『ジャズ:レッド・ホット・アンド・クール』(1954)、『タイム・ファーザー・アウト』(1961)がある。

 ブルーベックのピアノは、黒人ジャズマンに比べリズムが固いなどともいわれるが、クラシック音楽の影響もあってタッチが明確で、ジャズを聴きなれていない人たちにも音楽の構造がわかりやすい。とりわけデズモンドのスムーズでマイルドなアルト・サウンドとはよい対比をなし、これが大衆的人気の理由であった。彼が登場するまでは一部の黒人層に限られていたジャズ聴衆を、白人中心の学生階級にまで広げた功績は非常に大きい。

[後藤雅洋]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ブルーベック」の意味・わかりやすい解説

ブルーベック
Brubeck, Dave

[生]1920.12.6. カリフォルニア,コンコード
[没]2012.12.5. コネティカット,ノーウォーク
アメリカ合衆国のジャズピアニスト,作曲家。本名 David Warren Brubeck。アルバム『タイム・アウト』Time Out(1959)や,その収録曲『テイク・ファイブ』Take Fiveに代表されるように,親しみやすく美しいメロディと実験的なリズムを融合させた。ウェストコースト・ジャズの中心的存在とみなされた。4歳から母にピアノの手ほどきを受け,1933年から地元のジャズバンドで演奏を始める。パシフィック大学で音楽を学び,第2次世界大戦後はミルズ大学で,フランス人作曲家ダリウス・ミヨーのもとで作曲を学ぶ。1946年にデイブ・ブルーベック・オクテットを結成,みずから研究したポリリズム(複リズム)や多調性をいかした数曲を録音した。1951年にトリオを組み,ほどなくポール・デズモンドが加入してデイブ・ブルーベック・カルテットとなる。1967年に解散。2009年ケネディセンター栄誉賞を受賞。

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