小市民階級、小ブルジョアなどと訳される。資本主義社会は、その階級構造からいえば、生産手段を所有し、労働力の買い手として存在する資本家階級・ブルジョアジーと、生産手段を所有せず、労働力の売り手として存在する労働者階級・プロレタリアートの二つの基本的階級に区別される。小ブルジョアは、この二つの階級の中間にある階級で、中間階級(中間層)ともよばれる。すなわち、本来は、生産手段を所有するが、他人の労働を搾取するのではなく、自らも労働に従事している人たちが、小ブルジョアとみなされていたのである。
[河村 望]
この意味では、農村の独立自営農民および都市の独立した小営業者が、典型的な小ブルジョアの構成員である。この階級に属する人々は、資本主義のいっそうの発展のなかで、その多くがプロレタリアートに没落していくので、彼らはあるときには労働者階級とその利害をともにし、その同盟軍になる。しかし、他方では、彼らは自分の経営を発展させて、資本家階級の一員になる可能性を同時にもっている。成功する者がごく少数であれ、そのような可能性のあること、また、小規模なものであれ、生産手段を所有しているということは、彼らが労働者階級と自らを対立させ、その保守的性格を形づくる要因となっている。このように小ブルジョアは、矛盾した二つの顔をもっているのである。また、第二次世界大戦前、ドイツ、イタリアの都市の小ブルジョアは、ファシズム運動の担い手になった。
[河村 望]
資本主義の発展のなかで、これらの旧中間階級とは違った新しい中間階級が形成されていった。新中間階級(新中間層)とは、開業医、弁護士、知識人など知的・技術的自由業者、およびブルーカラーと区別されるホワイトカラーとされている。いわゆる肉体労働に従事するもの、生産労働者のみを労働者階級の構成員とみなし、精神労働に従事する事務、販売、技術労働者などの、いわゆる職員層をすべて新中間階級の構成員とする見解もあるが、一般の事務、販売、技術労働者は、労働者階級の構成員とみなされている。他方で、ホワイトカラーの最上層の会社重役や経営者は、資本の機能の遂行者として、資本家階級に属する人たちとみてよいであろう。
なお、これとは別に、中間階級は、上流階級、下流階級の中間という意味で、中流階級と同じ意味で用いられることがある。この場合には、財産、収入、学歴、職業、生活水準などの基準によって、上、中、下の階層への所属を調査者が決定するものであるが、同時に、被調査者が自分はどの階級に所属しているかという階級帰属意識の調査も行われる。また、先の階層所属の基準としての職業は、職業についての威信調査を行い、それによって上位の職業と下位の職業の区別を行うものである。
[河村 望]
『C・W・ミルズ著、杉政孝訳『ホワイト・カラー』(1957・創元社)』▽『芝田進午編著『現代日本のラディカリズム 小ブルジョア急進主義批判』(1970・青木書店)』▽『江口圭一著『都市小ブルジョア運動史の研究』(1976・未来社)』▽『村上泰亮著『新中間大衆の時代――戦後日本の解剖学』(1984・中央公論社)』▽『バーバラ・エーレンライク著、中江桂子訳『「中流」という階級』(1995・晶文社)』▽『雨宮昭彦著『帝政期ドイツの新中間層――資本主義と階層形成』(2000・東京大学出版会)』
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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