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資本家階級 しほんかかいきゅうcapitalist class

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

資本家階級
しほんかかいきゅう
capitalist class

マルクス主義において現代的階級を示す基本的概念の一つ。資本主義社会においては人格化された意志と意識とを付与された資本として資本家が存在する。資本家が取得する価値には,彼らが資本主義生産関係において占める位置によってさまざまな形態がある。いずれにしても,剰余価値を直接には生産過程において,間接的には流通分配過程において取得し,この意味で,剰余価値を生産する労働者と対立する。つまり資本家は搾取する階級を形成し,また社会の生産諸力を支配するものとしても一つの階級となる。こうして資本家階級は単なる資本家の集合以上の意義をもつ。歴史的には商人資本高利貸資本古代社会にも存在したが,商品としての労働力を購入して剰余価値をつくりだす資本家は,資本主義社会において初めて可能になった。したがって一般に資本家階級といわれるのは産業資本家階級であるが,資本主義社会の発展とともに必要資本量の単位が飛躍的に増大し,もはや私的な資本ではまかなえなくなり,共同資本としての株式資本が生れた。多数の投資家は生産の指揮監督から離れ,指揮監督を引受けた有力資本家も実務には手を染めなくなった。また資本家は利潤のなかから企業組織,産業組織の拡大および活発化のための元本を得て,時代の社会的・文化的要請に即すように社会の経済構造を再編するという役割もになっている。

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大辞林 第三版の解説

しほんかかいきゅう【資本家階級】

資本と生産手段を所有する階級。ブルジョアジー。 ↔ 労働者階級

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

資本家階級
しほんかかいきゅう
capitalist class

資本主義社会における支配階級フランス語ブルジョアジーともいう。マルクスは、資本主義社会をブルジョアジー・資本家階級とプロレタリアート労働者階級という二大階級に分裂した社会とみなし、そのなかで、生産手段を所有している資本家階級が支配階級になっているとした。この社会は、労働者階級が支配階級になる社会主義社会に移行し、さらに階級対立のない共産主義社会に発展するというのが、マルクス主義社会発展の理論であった。[河村 望]

市民、第三身分としてのブルジョア

ブルジョアジーは、もともとは、フランス語で都市の住民、市民を意味したブルジョアbourgeoisの総称であった。ブルジョアジーは、旧制度、封建社会の国王・諸侯(第一身分)および貴族・僧侶(そうりょ)(第二身分)に対する市民(第三身分)として、土地所有の支配に基礎を置く政治権力を打破して、自由・平等・友愛を原理とする市民社会の実現を目ざしたとされている。サン・シモンは、フランス革命以前は、国民は貴族、ブルジョア、産業者の三つの階級に分かれ、貴族が支配していたのに対し、革命後は、ブルジョアが支配階級に加わり、産業者・産業階級と対立するに至ったという。産業階級は、農業者、製造業者、商業者からなるが、ブルジョアは、貴族でなかった軍人、平民であった法律家、特権者でなかった金利収得者からなり、革命をやってのけたのは、産業者ではなくブルジョアであったとしている。[河村 望]

資本家階級と労働者階級

マルクスは、産業階級のなかに階級対立をとらえ、単なる貨幣の所有者ではない資本家、資本の所有者が生ずるのは、他方で、自分の労働力、労働能力を商品として売るよりほかに生活のしようのない、すなわち、生産手段を所有していない労働者が階級として大量に存在することが前提であったとしている。このような生産過程での資本家階級と労働者階級の敵対的関係は、政治権力をめぐる階級闘争になり、資本家階級は支配階級として、自らの政党をもち、公的権力を掌握するとされる。ただし、資本家自身が直接に職業的政治家や官僚や軍人になる必要はなく、代行者に任せておけばよいことになる。また、資本家階級の支配はイデオロギーの分野にも及び、その時代の支配的思想は、支配階級の思想であることは、資本主義社会でも同じだとされる。経営組織においても、資本の所有者が資本の搾取の機能の遂行者になる必要はなく、資本の機能の代行者に任される。[河村 望]

ベブレンの有閑階級

ベブレンは『有閑階級の理論』(1899)のなかで、有閑階級を、生産的な仕事を蔑視(べっし)し、金銭上の高い地位に基づいて非生産的な消費に時間を費やす階級と規定し、それは、私有財産制とともに発生し、略奪文化の段階では僧侶階級、貴族階級のなかにみられるが、それに続く金銭的文化の段階においては、資本家階級のなかで完全な形態をとるようになるとしている。彼は、肉体的生産労働の忌避を伴った財のおびただしい消費が、逆に名声や威信の高さを間接的に表現することになるところから、生産的労働と結び付きのない、したがって物質的な結果をもたらさないような活動によって、余暇を消費する生活態度が重んぜられると指摘している。[河村 望]

現代の資本家階級

現代では、巨大独占資本家と中小企業の資本家とでは、同じ資本家階級に所属するといっても、社会的役割において大きな差がある。また、かつては、資本家は資本の所有者であるだけでなく、労働過程における資本の指揮・監督の機能の遂行者であったが、現在では、資本の機能は、単なる監督労働者である経営者に任されることになった。こうして、資本家は労働過程から閉め出され、いわゆる有閑階級になるのだが、現在では、資本の所有者でない管理者・経営者も、資本家階級のなかに入れられている。[河村 望]
『K・マルクス、F・エンゲルス著、長谷部文雄訳『資本論』(1951~54・青木書店) ▽C・W・ミルズ著、鵜飼信成・綿貫譲治訳『パワー・エリート』(1969・東京大学出版会・UP選書) ▽サン・シモン著、坂本慶一訳『産業者の教理問答』(1975・中央公論社) ▽庄司興吉著『管理社会と世界社会』(1989・東京大学出版会) ▽寿里茂著『現代の社会構造』(1990・日本評論社) ▽高哲男著『ヴェブレン研究――進化論的経済学の世界』(1991・ミネルヴァ書房) ▽J・スコット、J・ウェスターガード、渡辺雅男、宮崎犀一著、渡辺景子訳『階級論の現在――イギリスと日本』(1998・青木書店) ▽橋本健二著『現代日本の階級構造――理論・方法・計量分析』(1999・東信堂) ▽K・マルクス、F・エンゲルス著、大内兵衛・向坂逸郎訳『共産党宣言』(岩波文庫) ▽ヴェブレン著、小原敬士訳『有閑階級の理論』(岩波文庫)』

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世界大百科事典内の資本家階級の言及

【ブルジョアジー】より

…ブルジョアジーという語は,ブルジョアbourgeoisの集合名詞であり,ブルジョアというのは,もともと町の人(町人)とか市民とかいう意味であるから,ブルジョアジーは,町人身分とか市民階級とか訳される場合もある。そして,主としてマルクス主義の用語法においては,ブルジョアジーは,近代資本主義社会における資本の所有者という意味で用いられ,したがって資本家階級と訳され,労働者階級としてのプロレタリアートの反対語とされる。このように,ブルジョアジーという語がかなり多義的であるのは,中世以来のその歴史的背景によるのである。…

※「資本家階級」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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