日本大百科全書(ニッポニカ) 「ネオプトレモス」の意味・わかりやすい解説
ネオプトレモス
ねおぷとれもす
Neoptolemos
ギリシア神話の英雄。ネオプトレモスとは「若い戦士」の意味。父はアキレウスで、別名をピロスPyrrhos(「赤毛の子」の意)ともいう。彼は父の死後、父にかわってトロヤ戦争に参加する。ギリシア軍は彼が参戦しない限りトロヤを滅ぼすことができないとの預言から、祖父のスキロス王リコメデスのもとで養育されていたネオプトレモスを、ギリシア軍の陣営に迎え、オデュッセウスがアキレウスの形見の武具を譲った。彼の奮戦は目覚ましく、ちょうどこのころトロヤ側は、最後の救援軍としてエウリピロスが大軍を率いてきたが、彼はエウリピロスを討ち取ってその軍を壊滅させた。また木馬に潜んでトロヤ城内へ侵入し、プリアモス王を守ろうとするアゲノルを殺し、さらにゼウスの祭壇に逃れて命ごいをするプリアモス王を容赦なく討ち取る。このときゼウスの祭壇を血で汚したことから、その神罰としてネオプトレモスは夭折(ようせつ)することになったといわれる。このほかに彼は、ヘクトルの子アステアナクスを城壁より投げ殺し、戦利品の分配からヘクトルの妻アンドロマケを得た。そして父アキレウスの霊を慰めるために、プリアモスの娘ポリクセネを墓前で犠牲に供した。彼はテティスの勧めで、しばらくトロヤに滞在したのち陸路をとって帰国したが、途中モロッソス人と戦って勝ち、その地の王となったとも、あるいはデルフォイで殺されたとも伝えられる。
[伊藤照夫]