改訂新版 世界大百科事典 「ネオプトレモス」の意味・わかりやすい解説
ネオプトレモス
Neoptolemos
ギリシア伝説で,英雄アキレウスの子。その名は〈新しき戦士〉の意。ピュロスPyrrhos(〈赤毛の子〉)とも呼ばれる。母親はスキュロス島の王女デイダメイアDēidameia。アキレウスの死後,その遺児ネオプトレモスの参戦がトロイア攻略の条件のひとつと知ったギリシア軍の要請で戦地を踏み,知勇兼備の将として活躍した。木馬の胎内にひそんで敵城内に入った勇士のひとりでもあり,トロイア陥落時には,敵王プリアモスを討ち,敵将ヘクトルの幼児アステュアナクスAstyanaxを城壁より投げて殺し,その母アンドロマケAndromachēを褒賞として得た。トロイア戦後の彼については,デルフォイで神官と争って殺されたとも,ギリシア本土西北部のエペイロス地方へ赴き,モロッソス人の王となったともいう。前280-前279年にイタリア南部でローマ軍と戦ったエペイロス王ピュロスは,多大の犠牲を払ってかろうじて勝利をおさめたことから,のちの世にPyrrhic victory(〈引き合わない勝利〉の意)の言葉を残したが,その彼はみずからをネオプトレモスの後裔と主張した。
執筆者:水谷 智洋
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報