日本大百科全書(ニッポニカ) 「プリチャード」の意味・わかりやすい解説
プリチャード
ぷりちゃーど
Katharine Susannah Prichard
(1883―1969)
オーストラリアの女性作家。本名ユーゴ・スロッセル夫人Mrs. Hugo Throssell。フィジー島生まれ。オーストラリア移住前の1886年新聞記者の父T・H・プリチャードと一時期タスマニアに住む。11歳で短編小説を発表、以来最後の長編『かすかな焔(ほのお)』(1967)まで、終始労働者を題材に社会意識に基づくリアリストの手法で、数多くの長・短編小説を書いた。1912~16年新聞記者としてロンドンに滞在中、『開拓者たち』(1915)がイギリスの出版社の植民地部門文学賞を受賞。帰国後19年、スロッセル大尉と結婚。ウェスタン・オーストラリアに住み、長編『ブラック・オパール』(1921)、『雄牛のように働くきこりたち』(1926)、『クーナードゥ』(1929)、『ハックスビーのサーカス』(1930)、『身近な他人』(1937)、金鉱の三部作『怒濤(どとう)の1890年代』(1946)、『ゴールデン・マイル金鉱地帯』(1948)、『翼のある種子』(1950)など、世界十数か国語に翻訳された名作を相次いで発表したが、なかでも『ブリティン』誌賞を受けた『クーナードゥ』は、この国の作家で初めて先住民を女主人公とした作品である。ほかに紀行『ロシアの真相』(1934)、マルクス評伝、自叙伝、戯曲などがある。
[平松幹夫・古宇田敦子]