改訂新版 世界大百科事典 「ヘビアスコーパス」の意味・わかりやすい解説
ヘビアス・コーパス
habeas corpus
イギリスの裁判所令状の一つ。13世紀初めころから発達したもので,〈身柄を持参すべし〉という意味。裁判所が拘禁の理由を取り調べ,その結果にもとづいて適当な処分を行うため,被拘禁者の身柄を裁判所に提出すべきことを拘禁者に命ずるもの。とくに17世紀に,スチュアート朝の国王がみだりに人民を逮捕して審理を行わずに拘禁を続けた場合に,そのような君主大権の濫用に対する人身の自由保護のための救済手段として活用され,1679年の〈ヘビアス・コーパス・アクト(人身保護法)〉によって,この令状の順守が明確に義務づけられるようになった。この議会制定法は〈第二のマグナ・カルタ〉と呼ばれ,アメリカ合衆国でも連邦および州の立法の基礎とされた。なお国家非常の場合(イギリスではフランス革命時代,アメリカでは南北戦争時代など)には例外として,この令状の順守を義務づける人身保護法の適用が停止された。
→人身保護法
執筆者:松浦 高嶺
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報