人身保護法(読み)ジンシンホゴホウ

デジタル大辞泉 「人身保護法」の意味・読み・例文・類語

じんしんほご‐ほう〔‐ハフ〕【人身保護法】

基本的人権を保障する日本国憲法の精神に基づき、不当に奪われている人身の自由を、司法裁判によって迅速かつ容易に回復させることを目的として制定された法律。昭和23年(1948)施行。

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精選版 日本国語大辞典 「人身保護法」の意味・読み・例文・類語

じんしんほご‐ほう‥ハフ【人身保護法】

  1. 〘 名詞 〙 人身保護を目的とする法律。昭和二三年(一九四八公布憲法第三四条の趣旨を具体化したもの。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「人身保護法」の意味・わかりやすい解説

人身保護法(日本)
じんしんほごほう

不当に奪われている人身の自由を、司法裁判により迅速かつ容易に回復させることを目的として1948年に制定された法律(昭和23年法律199号)。基本的人権を保障する日本国憲法の精神に基づき、イギリスのヘービアス・コーパスHabeas Corpusに倣って制定された。

 人身保護法は、違法な人身の自由の拘束が、刑事訴追手続の勾留(こうりゅう)によって行われている場合には、勾留理由開示の制度(憲法34条、刑事訴訟法82条~86条)によって救済されるが、これ以外の違法な拘束一般について、救済の及ぶ範囲を拡大したものである。たとえば、警察官による保護(警察官職務執行法3条)、伝染病(感染症)による入院(感染症予防・医療法19条、20条)、精神病による入院措置(精神保健福祉法29条)など行政権による人身の拘束のほか、民間における場合について、工場・事業所の宿舎私立病院などで身体の自由の拘束があったとき、この法律によって救済される。その手続は、法律上正当な手続によらないで身体の自由が拘束されている者は、本人あるいは第三者が本人にかわって、書面または口頭で、高等裁判所または地方裁判所に救済を請求する。そのときには裁判所は、関係者を召喚して尋問し、請求に理由があると認めたときは被拘束者をただちに釈放する(人身保護法16条)。拘束者が裁判所の命令に従わなかったり、被拘束者を移したり隠したりしたときは処罰される(同法26条)。また、被拘束者は身体を拘束されているから迅速に裁判しなければならない(同法6条)ことなどが定められている。

[池田政章]


人身保護法(イギリス)
じんしんほごほう
Habeas Corpus Act

1679年イギリスで、国家当局による不当な投獄を防ぐために制定された法律。原語のヘービアス・コーパスとは、法廷あるいは裁判官の前に「身柄を提出すべし」の意で、これを命ずる令状を「身柄提出令状」、一般に「人身保護令状」という。人身保護令状はコモン・ロー体系にごく古い時期からみられたが、チューダー朝以降、この令状を提出された獄吏は拘禁中の当該収監者の罪状を説明せねばならなかったところから、不当な拘禁から個人の身体の自由を守る手段とみなされるようになった。しかし実際上は、裁判所が休廷中は令状は発行されず、また収監者を海外の獄舎に移すことで令状の効力を免れるといった例も多くみられた。そこで議会はこの法律によって人身保護令状発行の対象を刑事犯全体に拡大し、その迅速化を図るための細目を定め、以後当局による不当な投獄は大いに抑制された。

[大久保桂子]

『高木八尺他訳『人権宣言集』(岩波文庫)』

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改訂新版 世界大百科事典 「人身保護法」の意味・わかりやすい解説

人身保護法 (じんしんほごほう)

イギリスのヘビアス・コーパスにならって,1948年に制定された法律。不当に奪われている人身の自由を,司法裁判によって迅速・容易に回復させることを目的とする(1条)。刑事訴訟法82~86条の勾留理由開示の制度とともに,憲法34条後段の拘禁理由開示の趣旨を具体化する意味ももつ。ただし対象は刑事手続に限定されない。法律上正当な手続によらないで,身体の自由を拘束されている者があるときは,本人でもだれでもその救済を請求することができる(人身保護法2条)。この請求は,被拘束者,拘束者または請求者の所在地を管轄する高等裁判所もしくは地方裁判所に対して行う(4条)。裁判所は,請求者,被拘束者および拘束者を召喚して(12条),公開の法廷において取調べを行う(14条)。請求者の陳述および拘束者の答弁を聴いたうえで,取調べを行う(15条)。その結果,請求理由なしとするときは,被拘束者を拘束者に引き渡し,理由ありとするときは,判決をもって被拘束者をただちに釈放する(16条)。この法律によって救済を受けた者は,裁判所の判決によらなければ,同一の事由によって重ねて拘束されない(25条)。しかし,人身保護規則4条が,拘束の違法性の顕著であることを請求要件としているため,請求が制限され,この法律はうまく機能していない。
人身の自由 →抑留・拘禁
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百科事典マイペディア 「人身保護法」の意味・わかりやすい解説

人身保護法【じんしんほごほう】

不当に奪われている身体の自由を,裁判によって迅速かつ容易に回復させることを目的とする法律(1948年)。被拘束者その他だれでも高等裁判所または地方裁判所に救済を請求でき,請求理由が正当と判決されれば,直ちに被拘束者は釈放されなければならない。最高裁判所は,特に必要と認めれば下級裁判所に属する事件を自ら処理し,その裁判・処分を取消し・変更し得る。救済行為を妨害した者は2年以下の懲役または5万円以下の罰金。英米法のヘビアス・コーパスの制にならったものであるが,刑事手続についてはほとんど用いられず,もっぱら幼児の引渡請求や,精神科病院への強制入院の関係などで利用されている。
→関連項目身体の自由

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「人身保護法」の意味・わかりやすい解説

人身保護法
じんしんほごほう

昭和 23年法律 199号。法律上正当な手続によらずに身体の自由を拘束されている者を裁判所によって迅速に救済させるための制度について定めた法律。英米法のヘビアス・コーパス制を範としたもので,その特色としては,(1) なんぴとでも救済の請求人になりうること,(2) 救済の請求は口頭でもなしうること,(3) 請求先は被拘束者,拘束者または請求者の所在地を管轄する高等裁判所または地方裁判所のいずれでもよいことなど,手続の迅速性がはかられている。

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「人身保護法」の解説

人身保護法(じんしんほごほう)
Habeas Corpus Act

イングランドで1679年に制定された法。恣意的な逮捕・投獄を防ぐために,拘禁理由と期間など,人身保護令状に書かれねばならない内容と発行手続きを厳密に定めたもの。中世以来の慣行を明文化したもので,原題は「身柄を提出せよ」という意味のラテン語。制定後非常事態の際に一時適用が停止されたこともあったが,イギリスにおける基本的人権の擁護に大きな役割を果たしている。

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旺文社世界史事典 三訂版 「人身保護法」の解説

人身保護法
じんしんほごほう
Habeas Corpus Act

1679年,イギリス議会がチャールズ2世の専制を防ぐために,不当な逮捕・拘禁を禁じた法令
大逆罪を犯した者でない限り,逮捕後20日以内に正式裁判を受けることができるように,人権保障の具体的な手続きを明確にしたもの。

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世界大百科事典(旧版)内の人身保護法の言及

【ヘビアス・コーパス】より

…裁判所が拘禁の理由を取り調べ,その結果にもとづいて適当な処分を行うため,被拘禁者の身柄を裁判所に提出すべきことを拘禁者に命ずるもの。とくに17世紀に,スチュアート朝の国王がみだりに人民を逮捕して審理を行わずに拘禁を続けた場合に,そのような君主大権の濫用に対する人身の自由保護のための救済手段として活用され,1679年の〈ヘビアス・コーパス・アクト(人身保護法)〉によって,この令状の順守が明確に義務づけられるようになった。この議会制定法は〈第二のマグナ・カルタ〉と呼ばれ,アメリカ合衆国でも連邦および州の立法の基礎とされた。…

※「人身保護法」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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