ヘブライ文字(読み)へぶらいもじ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヘブライ文字」の意味・わかりやすい解説

ヘブライ文字
へぶらいもじ

紀元前一千年紀パレスチナのイスラエル人ないしユダヤ教徒は、自分たちの言語たるヘブライ語ないしアラム語を、当時の東地中海世界共通の文字体系であったいわゆるフェニキア文字(厳密には北西セム文字)を用いて表記した。現在のいわゆるヘブライ文字は、このユダヤ人アラム語の段階でフェニキア文字(=古アラム文字)から漸次変化したもので、現在の標準書体たる「方形文字」は、紀元後1世紀末にユダヤ教学者の間で確立されたと推定される。字母の数は22個で、1字が1子音を表すが、,hwyの四字は母音を表す場合もある。大文字小文字の区別はなく、単語ごとに分かち書きされるが、現代の筆記体以外では、アラビア文字のように字と字を続けて書くことはない。各字母はまた数字としての値ももっている。中世以降のヘブライ語聖書本文につけられて母音・アクセントなどを表すいわゆるマソラ(=伝承符号は、ユダヤ教伝承学者の手になるもので、10世紀に完成した「ティベリア式」母音符号は、必要に応じて現代ヘブライ語の表記にも適用される。

[松田伊作]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ヘブライ文字」の意味・わかりやすい解説

ヘブライ文字
ヘブライもじ
Hebrew alphabet

ヘブライ語の表記に用いられる文字。前6世紀頃までのものを初期ヘブライ文字といい,フェニキア文字に近い。アラム文字の系統をひいて前2~1世紀に成立したものを角型ヘブライ文字といい,現在用いられているのもこれから発展したものである。 22の子音字から成り,右から左に書かれる点は北セム文字の特徴をそのままとどめているが,8世紀以降,母音符号が用いられる。

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