日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヘルツェンベルグ鉱」の意味・わかりやすい解説
ヘルツェンベルグ鉱
へるつぇんべるぐこう
herzenbergite
第一硫化スズの鉱物。比較的例の少ないSn2+の独立鉱物。ティール鉱teallite(化学式PbSnS2)とともにヘルツェンベルグ鉱系を形成する。自形はきわめて微細なため未報告。熱水鉱脈型錫(すず)鉱床あるいは接触交代型錫鉱床中に産する。日本では大分県豊後大野(ぶんごおおの)市豊栄鉱山(閉山)および同佐伯(さいき)市新木浦(しんきうら)鉱山(閉山)から報告されている。
共存鉱物は錫石、黄錫鉱(おうしゃくこう)、オッテマン鉱ottemannite(Sn2S3)、ベルント鉱berndtite(SnS2)、黄鉄鉱、閃亜鉛鉱(せんあえんこう)、硫砒(りゅうひ)鉄鉱、石英など。同定は物理的諸性質が観察されるような粒度の大きいものが知られていないので、確立されていない。命名は原産地ボリビア、オルロOruro鉱山の分析化学者ロベルト・ヘルツェンベルクRobert Herzenberg(1885―?)にちなむ。
[加藤 昭]