硫化スズ(読み)りゅうかすず(英語表記)tin sulfide

日本大百科全書(ニッポニカ) 「硫化スズ」の意味・わかりやすい解説

硫化スズ
りゅうかすず
tin sulfide

スズ硫黄(いおう)の化合物。2価と4価のものが知られる。

(1)硫化スズ(Ⅱ) スズ(Ⅱ)塩の酸性溶液に硫化水素を通ずると水和物として得られる。褐黒色の結晶。水素により金属に還元され、空気中で熱すると酸化スズ(Ⅳ)になる。硫化アルカリには不溶だが、ポリ硫化アンモニウム(黄色)に溶けてチオスズ酸塩を生じる。酸性にすると硫化物が沈殿する。濃塩酸に溶ける。

(2)硫化スズ(Ⅳ) 化学式SnS2式量182.8。スズ(Ⅳ)塩溶液に硫化水素を通して得られる。工業的にはスズ箔(はく)、硫黄華塩化アンモニウムを融解してつくられ、黄金黄色のうろこ状物質で、金箔金粉の代用品として用いられることがあり、偽金あるいは彩色金mosaic goldともよばれる。黄金色、六方晶系の鱗片(りんぺん)状結晶。空気中で安定である。王水、熱アルカリ、硫化アルカリ溶液に溶ける。

(3)三流化二スズ 化学式Sn2S3。式量333.6。硫化スズ(Ⅱ)と計算量の硫黄の混合物を強熱して得られる黄色結晶。比重4.9。SnIISnIVS3である。濃塩酸でSnSとSnS2になる。

[守永健一・中原勝儼]


硫化スズ(データノート)
りゅうかすずでーたのーと

硫化スズ(Ⅱ)
  SnS
 式量  150.8
 融点  880℃
 沸点  1230℃
 比重  5.22(測定温度25℃)
 結晶系 斜方
 溶解度 1.36×10-6g/100g(水18℃)

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「硫化スズ」の意味・わかりやすい解説

硫化スズ
りゅうかスズ
tin sulfide

(1) 硫化スズ (II) ,硫化第一スズ  SnS 。灰黒色の結晶,あるいは黒色無定形粉末。融点 880℃,沸点 1230℃。比重 5.08。水に不溶。水酸化アルカリおよび硫化アルカリ溶液と反応しない。濃塩酸,熱濃硫酸と反応して溶ける。重合触媒として使用される。
(2) 硫化スズ (IV) ,硫化第二スズ  SnS2金属光沢のある黄金色葉状物質。脂感がある。比重 4.51。水および希酸に不溶。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報