フランスの映画監督。1940年代から1950年代にかけて活躍した。職人肌の緻密(ちみつ)な映画づくりはヌーベル・バーグの先駆け的存在となった。セザンヌ家と親交のあった家庭に生まれ、その縁でジャン・ルノワールと知り合い、『素晴らしき放浪者』(1932)から『ラ・マルセイエーズ』(1938)まで助監督を務めた。最初の監督長編作品『最後の切り札』(1942)がヒットしたため、ナチス・ドイツの占領下で『赤い手のグッピー』(1943)、『偽れる装い』(1945)を撮った。第二次世界大戦後は『幸福の設計』(1947)がカンヌ国際映画祭で恋愛心理映画賞グランプリを受賞し、その後はシモーヌ・シニョレSimone Signoret(1921―1985)が娼婦を演じる『肉体の冠』(1952)、ジャン・ギャバン主演のフィルム・ノワール(犯罪映画)『現金(げんなま)に手を出すな』(1954)などの傑作が続く。ジェラール・フィリップ主演でモジリアーニを描いた『モンパルナスの灯(ひ)』(1958)の後、脱獄映画『穴』(1960)の編集を終えたところで病死した。息子のジャン・ベッケルJean Becker(1933― )も映画監督。
[古賀 太]
最後の切り札 Dernier atout(1942)
赤い手のグッピー Goupi mains rouges(1943)
偽れる装い Falbalas(1945)
幸福の設計 Antoine et Antoinette(1947)
エドワールとキャロリーヌ Édouard et Caroline(1951)
肉体の冠 Casque d'or(1952)
エストラパード街 Rue de l'Estrapade(1953)
現金に手を出すな Touchez pas au grisbi(1954)
アラブの盗賊 Ali-Baba et les 40 volurs(1954)
怪盗ルパン Les adventures d'Arsène Lupin(1957)
モンパルナスの灯 Montparnasse 19(1958)
穴 Le Trou(1960)
スペイン後期ロマン主義の詩人。セビーリャ生まれ。幼くして孤児となり、長じてマドリードに出て詩作に励む。彼の詩の源泉と思われる恋に破れ、また結婚にも挫折(ざせつ)し貧窮のうちに夭折(ようせつ)。死後、友人の手によってまとめられた作品がベッケル唯一の詩集『叙情詩集(リーマス)』(1871)である。詩人のひそかな告白ともいうべき詩句で綴(つづ)られ、愛の歓喜と苦悩、孤独、精神の空白、死の予感などが吐露されている。「天使の弾くアコーディオン」と称される繊細な感受性、伝統的な民衆詩に根ざした簡素な詩型と深い主観主義は、たとえばハイネの「ドイツ的ため息」とも異なる独自の世界を現出している。後世の詩人に与えた影響は大きく、スペイン近代詩はベッケルに始まるといっても過言ではない。ほかに伝説に題材を求めた幻想的短編集『伝説集』(1864)がある。これも第一級の詩的散文と評価され、詩と同様に広く親しまれている。
[有本紀明]
『荒井正道訳『抒情小曲集』(『世界名詩集大成14 南欧・南米』所収・1962・平凡社)』▽『神代修編『ベッケル・スペイン伝奇作品集』(1977・創土社)』
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
スペインの詩人。セビリャに生まれ,マドリードで没する。幼くして孤児となり,健康に恵まれず,結婚に失敗するなど生涯不遇であった。1850年代,ハイネに代表されるドイツ抒情詩の要素とアンダルシア民謡の要素とをスペイン詩に導入しようとする動きがみられたが,ベッケルはその中から現れた。生前に発表された作品の数は少なく,また68年の革命の混乱の中で,完成していた詩集の草稿が失われたが,後に作者の手で書き直され,彼の死後,友人たちによって《抒情詩集》(1871)として出版された。そこでは愛,幻滅,詩と詩人,孤独と絶望など,おもにロマン派から引き継がれたテーマが,飾りけのないスタイルでうたわれている。散文の作品には,書簡形式による《僧房便り》(1864),スペイン内外の説話を素材とする《伝説集》(1860-63発表)がある。ホフマンの影響のみられる後者は,愛,かなたの世界の存在などをテーマとし,感覚の強調,色彩に満ちた絵画的描写,暗喩の大胆な使用によって,彼の詩と同様,モデルニスモの前ぶれとなった。
執筆者:野谷 文昭
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…
【19世紀――ロマン主義からリアリズムへ】
19世紀前半はヨーロッパ全体にロマン主義が流行したが,スペインにもやや遅れて移入され,詩と演劇の分野に成果が見られた。革命運動と激しい恋の末に夭逝したJ.deエスプロンセーダの,ドン・フアン伝説を扱った物語詩《サラマンカの学生》と,神秘的ともいえる深遠な詩語を操った孤独な夢想詩人G.A.ベッケルの《抒情詩集》は文学史に残る傑作である。演劇では1835年に上演されたリーバス公爵の《ドン・アルバロ》が,ビクトル・ユゴーの《エルナニ》のスペイン版ともいうべき,ロマン主義の勝利を決定づける作品であった。…
※「ベッケル」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...
11/21 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新
10/1 共同通信ニュース用語解説を追加