翻訳|Belfast
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イギリス、北アイルランドの首都。ベルファスト湾奥に臨む港湾・工業都市。人口27万7391(2001)。地名はラーガン川の「河口渡河地点」を意味するゲール語ベル・ファストBeal Feirsteに由来する。アルスター(アイルランド島北部地方)を征服したノルマン人が1177年に城を築造。アーサー・チチェスター男爵が1611年に新たに城を建て都市計画を実施して以来、市勢が急激に発展した。13年には勅許都市となり、85年には人口2000人を有するアルスター第一の都市に成長した。17世紀の後半、イギリスのウィリアム3世の庇護(ひご)のもとに流入したフランスの新教徒(ユグノー)によって、アルスターの伝統産業リンネル(亜麻(あま))工業発展の基礎が築かれた。17世紀のイギリス人、スコットランド人の「アルスター植民」、産業革命期の機械制大工場制による繊維産業、造船工業の発展に伴い、市勢は著しく増大、1830年に人口5万、50年には10万を数えるに至った。
現在では、リンネル、造船、たばこ、食品、ウイスキー蒸留などの諸工業のほか、石油化学・機械工業がカストラリー地区、造船がラーガン湾に面する臨海工業地帯に集積している。北アイルランド総人口の16.5%を占める人口集中地区であると同時に、全就業者の約60%を吸収する。これは、産業の貿易依存度がきわめて高く、全貿易量の約60%がベルファスト港を通じて行われるためである。最近は、輸入依存度の高い原材料の輸送コストを節減するため、単位重量当りの販売価格比が高いタービン、コンピュータ、プラスチック、タイヤ、電子機器などの製品の生産へ特化していく傾向がある。このような産業構造と立地動向をいっそう促進した要因は、北アイルランド全体で8.9%(1998)にも上る失業者と、低賃金労働力の解消を目的とした自治政府の多国籍企業の誘致政策であった。
宗教人口の構成をみると、イギリス系住民の多くが長老派を中心とするプロテスタント教徒であり、所得水準、社会的威信ともに高い。これに対して、ローマ・カトリック教徒のアイルランド系住民が拮抗(きっこう)しているため、根深い社会不安を引き起こしている。それがイギリスの長期にわたる植民地支配に基づいているだけに、両派間の社会経済的格差が宗教上の宿命的対立という次元にまで投影、拡大されている。
ベルファスト城、博物館、政府庁舎、1845年創立のクイーンズ大学など、歴史的旧跡が多い。市の北西21キロメートルのオールダーグローブに国際空港がある。
[米田 巌]
北アイルランドの主都。アイルランド島北東部に位置し,同島第1の工業都市。人口28万(2001)。ベルファスト湾に注ぐラガン川の河口にあり,古くはこのあたりの砂州が渡河地点であった。市名も,〈砂州の渡り場〉を意味するアイルランド語に由来する。宗派別人口はカトリック系26%,プロテスタント系51%,その他および無回答24%(1971)で,アイルランド独立に際し,プロテスタント系の多い北アイルランドはイギリス領にとどまり,アイルランド統治法(1920)によってベルファストはその主都となった。カトリック系の公民権運動のたかまった1969年には,プロテスタント系との衝突や暴動が起こり,以後カトリック系とプロテスタント系は居住地域を分けるようになった。ベルファストが工業都市に成長するうえで大きな役割を果たしたのは,17世紀末にウィリアム3世の保護の下に移住してきたフランスのユグノーであった。彼らはのちリネン工業をこの地に興した。イギリス産業革命の影響をうけてベルファストを中心に18世紀末から水車および蒸気機関による木綿工業が興ったが,これはランカシャーとの競争に敗れて,1830年代には衰退した。代わって興ったのが近代的リネン工業で,ベルファストは世界有数のリネン工業を誇るようになり,今日にいたる。このほか,タイタニック号その他の建造で知られるハーランド・ウルフ造船所(1975年に国有化)があり,ロープ工業,タバコ工業,航空機産業なども盛んである。ベルファスト・クイーンズ大学(1845創立)の図書館には,アダム・スミスの蔵書の一部が収められている。また,大学に隣接した植物園には,ロンドン万国博覧会(1851)のクリスタル・パレスを模した建造物が保管されている。なお,1941年4月にドイツ空軍の空襲をうけ1000人以上の死傷者をだした。
執筆者:上野 格
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アイルランドの独立後もイギリスに留まった北アイルランドの中心都市。造船,航空機,リネンなどの近代産業が発達。1960年代末より少数派カトリック教徒の差別撤廃要求に端を発した,プロテスタント多数派との武力衝突によって,今日に至る北アイルランド紛争の主要な舞台となっている。
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