( 1 )「史記索隠」には「滑稽」について、口が達者でうまく言いくるめる、酒樽から酒が流れ出るようにことばが溢れ出る、カッケイと読んで「俳諧」と同義、などと注する。
( 2 )日本でも上代から基本的には同じ意味で使われており、近世には「利口」、あるいは「滑稽太平記」の「滑稽」のように文学ジャンルとしての「俳諧」と同義とされることもある。
ギリシア語のkōmos(歌と踊りのある祝祭行列)に由来する。言葉によるのであれ,身振りや音や色や形によるのであれ,誇張によって引き起こされる笑いを基本とした表現方法の一つである。人間がなぜ滑稽を感じるのか,滑稽がどのような要素から成り立っているのかについては,哲学や喜劇論,心理学などの分野でさまざまに語られてきた。アリストテレス以後,カント,シラー,ベルグソン,ハルトマン,フロイトなどの論究がある。卑俗な滑稽もあり,精妙な滑稽もあるが,共通して,直接的な怒りや悲しみ,同情に訴えるのではなく,自由な感情というものを前提としており,きまじめな常識では達成できない批評機能を含んでいる。セルバンテスの《ドン・キホーテ》におけるように,滑稽と感じながら主人公の人間性に魅惑される場合もあれば,シェークスピアが生み出したフォールスタッフにみるように,滑稽を通じて規制ずくめの日常的秩序を思い知り,そこからの解放感を覚える場合もある。意表を突いたり,グロテスク化して得られる滑稽の効果は,文学ではとりわけ風刺やパロディに,演劇では中世の謝肉祭劇や近世の民衆劇,現代の不条理劇に多くみられる。近代絵画ではドーミエが戯画化による滑稽を巧みに用いて人間典型を描き出した。批評機能としての滑稽の要素は,シュルレアリスム絵画やポップ・アートにも認めることができる。
→喜劇
執筆者:池内 紀
古代中国,戦国から秦・漢時代にかけての宮廷には,機転の利いたユーモアと迫真の演技力をまじえながら,流れるように滑脱な弁舌をもって,君主の気晴しの相手となり,また風刺によって君主をいさめる人々が仕えていた。滑稽の原義はそのような人々,またはそのような能力を意味する。幇間(たいこもち),道化,あるいは言葉の原義での〈俳優〉の一種であるが,そのなかには漢の武帝に仕えて〈滑稽の雄〉といわれた東方朔のように教養ゆたかな文士もいた。司馬遷は彼らが諷諫によって君主の愚行を改めさせた点を高く評価し,《史記》の中に〈滑稽列伝〉を立てて表彰する。《漢書》も〈東方朔伝〉を詳しく記すが,以後この種の人々は宮廷に少なく,おそらく後漢末に〈俳優饒言〉と形容された禰衡(でいこう)を最後として姿を消す。中国では古代の宮廷に特有な一群の人々であり,以後,滑稽はただ形容詞として残ることになった。
執筆者:川勝 義雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
…この滸人を《後漢書》などにいう(おこ)の国(南蛮の愚かな風俗をした国)の人とする説が古来行われているが,ここはオコな人と考えてよい。散楽は当時行われた雑芸で曲芸,軽業,滑稽な物真似,侏儒舞(ひきひとまい),傀儡子(くぐつ),滑稽な対話芸などがあったが,〈今日の事散楽の如し〉(《小右記》)などのように滑稽の代表のようにも考えられ,さらに猿楽(さるがく∥さるごう)ともいわれて,滑稽なことを意味するふつうのことばともなった。猿楽と書かれるようになるには,大嘗祭・鎮魂祭の神楽の舞などに奉仕した猿女(さるめ)の故事と混交したためと考えられるが,それは散楽のようなオコな行為が古代の芸能・祭式にともなっていたためと思われる。…
※「滑稽」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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