日本大百科全書(ニッポニカ) 「ベネチテス類」の意味・わかりやすい解説
ベネチテス類
べねちてするい
bennettitaleans
[学] Bennettitales
古生代の三畳紀後半に出現し、中生代に繁栄したが白亜紀末に絶滅した裸子植物。全世界にみられ、日本の中生界からも葉や幹の化石が多産する。外見や材の構造は現生のソテツ類に似るが、生殖器官は被子植物の花に似た形態をもつ、中生代を代表する裸子植物である。キカデオイデア類ともいう。分枝する細い茎をもち、高さ2メートルほどの低木となったウィリアムソニア科と、高さが通常1メートル未満の、樽(たる)型でほとんど枝分かれしない幹をもつキカデオイデア科とがある。ウィリアムソニア科には、両性生殖器官をつけるウィリアムソニエラWilliamsoniella、単性の生殖器官をつけるウィリアムソニアWilliamsoniaなどがあり、キカデオイデア科には幹の表面にほとんど柄のない両性生殖器官を多数つけるキカデオイデアCycadeoideaなどがある。
葉はソテツに似た羽状複葉で、長さ数センチメートルから1メートル以上、形態的な違いにより次のような属に区別されている。アノモザミテスAnomozamites、オトザミテスOtozamites、ザミテスZamites、シュウドキカスPseudocycas、タエニオプテリスTaeniopteris、ディクティオザミテスDictyozamites、ニルソニオプテリスNilssoniopteris、プティロフィルムPtilophyllum、プテロフィルムPterophyllum、などである。化石の外見のみでソテツ類の葉と区別することは困難であるが、気孔の構造が異なるので、表皮細胞やクチクラが保存されていれば識別可能である。また、葉柄の維管束配列も異なる。材は、放射柔組織に富む多髄質で、針葉樹類のように発達のよいものではない。
生殖器官は一般に両性で、主幹の葉腋(ようえき)に側枝として生じ、この側枝先端に1個が頂生する。生殖枝には、栄養葉の変形である多数の包葉がまず生じ、さらに雄の器官である小胞子葉が輪生し、ついで最先端に肉質の雌性生殖床が生じる。小胞子葉は、腎臓(じんぞう)形でがま口のように裂開する単体胞子嚢(のう)群をつける。雌性生殖床は球形から長円錐(えんすい)形で、表面に無数の胚珠(はいしゅ)と、胚珠が退化した器官と考えられる小さな棍棒(こんぼう)状の種間鱗片(りんぺん)とが密生する。雌性生殖床は、いくつかの大胞子葉が縮小・癒合して形成された器官とみられている。種子は小さく、長さ数ミリメートル以下。
ベネチテス類の両性の生殖器官は、被子植物に一般的な両性花と構造的によく似ているが、起源は異なる。しかし、キカデオイデアには被子植物のように昆虫による送粉を行った証拠がみつかっている。現在のソテツ類の一部にみられるように、送粉者として甲虫類が推定されている。
[西田治文]
『西田誠編、進化生物学研究所・東京農業大学農業資料室共同企画『進化生研ライブラリー4 裸子植物のあゆみ――ゴンドワナの記憶をひもとく』(1999・信山社)』