改訂新版 世界大百科事典 「ベルギウス法」の意味・わかりやすい解説
ベルギウス法 (ベルギウスほう)
Bergius process
ドイツのF.ベルギウスによって1910年代の初めに発明された石炭の液化法をいう。第2次大戦のころ,ドイツやイギリスで軍事上の目的で石油に代わる液体燃料を石炭から生産することが工業的に実施された歴史があるが,戦後,石油が豊富に供給されるようになって,すたれてしまった。しかし,70年代の石油危機以降,石炭からの液体燃料の生産技術の開発研究が再び盛んになり,その一つとして,このベルギウス法に基礎をおき,改良を加える計画が進められている。
ベルギウス法は,石炭の微粉末に油を加えてスラリー状にし,鉄やスズを触媒として加え,水素の共存下に,高温(400~500℃),高圧(200~500気圧)の条件下で分解を行う。すなわち,石炭を水素化分解し,石炭を構成する高分子量の有機成分の解重合を行うものである。反応は2段階に行い,まず重質油を得たのち,次にこの重質油をさらに水素化分解してガソリンなどをつくる。このベルギウス法によれば,歴青炭3.6tからガソリン,軽油,LPGなど合計1tが生産された。これらの液体燃料製品のもつ熱量は,もとの石炭の熱量のわずか42%にすぎない。このように熱効率が低い理由は,石炭の液化のために,大量の水素が消費され,また前記の高温・高圧の水素化分解反応装置を運転するために多くのエネルギーが必要であり,これらも石炭によってまかなうためである。
軍事目的ならばともあれ,民需用の石炭液化製品を石油製品とあまりかけはなれない価格で供給するためには,水素消費量の節約や分解反応条件の緩和,装置規模の拡大,運転の信頼性の向上など,解決されるべき技術課題が少なくない。このため,ベルギウス法の原理をふまえてその改良を行うだけでなく,まったく新しい反応原理の導入も含めて,石炭液化技術の開発が進められている。
執筆者:冨永 博夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報