翻訳|velociraptor
竜盤目獣脚類(亜目)テタヌラ類(下目)コエルロサウルス類Coelurosauriaマニラプトル形類Maniraptoriformesマニラプトル類Maniraptoraエウマニラプトル類Eumaniraptoraドロマエオサウルス科Dromaeosauridaeに属する恐竜。モンゴルや中国の白亜紀後期、約8580万年~6550万年前の地層から産出した全長約1.8メートルの肉食恐竜。属名はラテン語で「敏捷(びんしょう)な略奪者」という意味。ベロキラプトルと草食恐竜プロトケラトプスProtoceratopsが格闘中に砂嵐(すなあらし)のため埋没し化石化した標本が、モンゴルのゴビ砂漠中部トゥグリギン・シレーという産地で、1971年にポーランド・モンゴル探検隊により発掘された。この化石はモンゴルのウランバートルの博物館に実物が展示されているが、日本でも群馬県の神流町恐竜センター(かんなまちきょうりゅうせんたー)と福井県立恐竜博物館にレプリカが展示されている。ベロキラプトルは、長いくちばしを備えた低い頭に、比較的大きな眼窩(がんか)をもつ。長いS字形の頸(くび)と短い胴体であった。典型的なドロマエオサウルス類で、頑丈な前肢には大きな鉤(かぎ)づめを備えた3本の機能指をもち、後肢の機能指も3本であるが、第2指は特殊化した大きな鉤づめをもつ。長い尾は腱(けん)で強化されており、根元の部分は自由に動かすことができる。格闘中の化石の産状では、ほぼ同大のプロトケラトプスの襟飾りを片手でつかみ、後肢の鉤づめを相手の腹部に打ち込んでいる。他方、プロトケラトプスはベロキラプトルの前肢にかみつき反撃をしている。ベロキラプトルが後肢の第2指の鉤づめをどう使ったかを示すよい実例である。また、オビラプトルOviraptorの卵の巣の中に孵化(ふか)直後のベロキラプトルの幼体2頭が混じっている産状が発見されたことがあり、解釈の一つとして、ベロキラプトルの托卵(たくらん)習性(他種の巣に産卵し、抱卵、雛(ひな)の世話などを任せる習性)を示唆するものとみなされている。ベロキラプトルの托卵行動や格闘中の埋没などを含むストーリー展開のライブ・シアターが、2003年(平成15)に神流町恐竜センターに設けられ、好評を博している。なお、1990年代後半以降、ベロキラプトルは体に羽毛をもつ恒温動物であろうと解釈されている。
[小畠郁生]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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