改訂新版 世界大百科事典 「ベンケイガニ」の意味・わかりやすい解説
ベンケイガニ
Sesarmops intermedia
甲殻綱十脚目イワガニ科の甲殻類。東京湾から韓国,台湾,中国を経てインドまで分布し,河口付近の湿地にすむが,ほとんど陸上生活をし,幼生を海に放つとき以外は海水につからない。甲幅3cmほどで,一様に朱赤褐色。甲はわずかに横長の四角形で,甲の側縁はむしろ後方が開く。甲面は弱く盛り上がり,額域が下を向く。前側縁は眼窩(がんか)外歯の後方に深い切れ込みを一つもつ。はさみ脚は大きく,掌部,可動指とも滑らか。名の由来はよくわからない。雑食性で魚の死体や草などを食べる。夏に産卵する。ペットとして人気がある。近縁のカクベンケイガニParasesarma pictumは色がじみで,甲の側縁には切れ込みがなく,はさみ脚の掌部上縁に櫛歯(くしば)状の剛毛が2列,可動指の上縁に顆粒(かりゆう)が18~19個ある。また,フタバカクガニChiromantes bidensははさみ脚の掌部に2~3列の櫛歯状の剛毛列と可動指上縁に13個の顆粒をもつほか,甲の側縁に切れ込みが一つある。いずれも陸上生活をし,とくにフタバカクガニは海から遠く離れた場所にもすむ。
執筆者:武田 正倫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報