日本大百科全書(ニッポニカ) 「ペルジーノ」の意味・わかりやすい解説
ペルジーノ
ぺるじーの
Perugino
(1448ころ―1523)
イタリア・ルネサンスの画家。本名はPietro Vannucciだが、ペルージア人を意味するペルジーノが通称となる。まずピエロ・デッラ・フランチェスカの影響を受け、それからフィレンツェでベロッキオの工房に入って修業し、独自の作風を形成する。15世紀末にはペルージアとフィレンツェを拠点に中部イタリア各地で活躍し、多くの注文に応じる人気画家となる。ピエロ・デッラ・フランチェスカやフランドル絵画などの影響による静かな人物と風景、盛期ルネサンス絵画を予見する単純で明快な画面構成、そしてウンブリア出身の画家らしい敬虔(けいけん)な宗教感情などが、彼の絵画の特徴である。彼は弟子たちを使っておびただしい数の壁画や祭壇画、肖像画を制作したが、バチカン宮システィナ礼拝堂の壁画、ペルージアの両替商組合の建物の装飾、ルーブル美術館の『アポロとマルサイアス』や『愛と純潔の戦い』、あるいはウフィツィ美術館の『フランチェスコ・デッレ・オペレの肖像』などが重要である。晩年には人気を失い、ペルージアに引きこもって暮らした。彼はまた、ラファエッロの師としても美術史上にその名を残している。
[石鍋真澄]