改訂新版 世界大百科事典 「ホテイアオイ」の意味・わかりやすい解説
ホテイアオイ
water hyacinth
Eichhornia crassipes (Mart.) Solms.
熱帯・亜熱帯アメリカ原産の,ミズアオイ科の浮遊性多年生水草。現在では,世界各地の亜熱帯~熱帯に野生化し,静水域で大群落をなすことが多い。日本でも九州の温暖地に野生化している。葉柄基部が球状にふくらみ,浮性をもつ。葉は心臓形で平滑。根は繊維状で密生し,黒紫色で水中によく茂る。多くの匍匐(ほふく)枝を出し,その先に小苗を生じて繁殖し,繁殖力はきわめて旺盛で,短期間で群落状となる。夏に高さ15~25cmぐらいの花茎を出し,径3cmぐらいの,藤紫色で中央に黄斑のある6弁花を短穂状に咲かせたいへん美しいが,1日花である。熱帯では水系の舟の進行の障害になるので防除に苦労するが,水中の窒素やリンをよく吸収するので,水質浄化に役だてることが考えられている。池や水がめなどに浮生させて楽しむが,底に土を入れ,これに根を張らせて育てると生育がよく,花もよく咲く。株の越冬には水温10℃を必要とする。繁茂しすぎると飼育する魚が死にやすいので,養魚の際は注意したい。
執筆者:柳 宗民
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報