グランドツアー(その他表記)Project Grandtour

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「グランドツアー」の意味・わかりやすい解説

グランドツアー
Project Grandtour

惑星探査機を 1977~79年に打ち上げ,木星土星天王星海王星といった地球からみれば外側にある太陽系天体観測をしようというアメリカ合衆国の計画。これにはイギリス,ドイツ連邦共和国 (西ドイツ) ,フランスなど6ヵ国の科学者百余人が協力した。 1970年代後半から 1980年代にこれらの惑星がほぼ同じ飛行軌道線上に並ぶ (→惑星直列 ) ので,アメリカ航空宇宙局 NASAでは 1972年から準備を始め,詳しい飛行計画を進め,1977年9月5日にケープケネディ (ケープカナベラル ) から探査機ボイジャー 1号を打ち上げた。同機は 1979年3月に木星,1980年 11月に土星の近くを通り,太陽系を離脱するコースに乗った。また,1977年8月 20日に出発したボイジャー2号は 1979年7月に木星,1981年8月に土星,1986年1月に天王星,1989年1月に海王星の近くをそれぞれ通過した。観測の結果,木星や天王星にもリングのあることや木星の衛星であるイオ活火山の墳煙が認められたことなど,数多くの新事実が明らかになった。このような「飛び石方式」による探測好機はこののち 179年後までやってこない。

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改訂新版 世界大百科事典 「グランドツアー」の意味・わかりやすい解説

グランド・ツアー
grand tour

17世紀末から18世紀を通じて,イギリスで良家の子弟の教育,ことに古典的教養の修得のために行われたヨーロッパ大陸への旅行のこと。期間はときに数年間に及び,目的地はパリなど主要都市や名所旧跡であったが,最終目的地は常に,古代ローマ遺跡が残りまたルネサンスの中心地であったイタリア,ことにローマとみなされた。旅行の内容は観光のほかに,各国上流階級や学識経験者との交流,大学やアカデミーへの短期入学,書物や美術品の購入などであった。グランド・ツアーは,イギリスにおいて,パラディオ主義の流行を促し,また16~18世紀イタリア美術のコレクションの形成に寄与した。たとえば,第3代バーリントン伯は,1710年代のグランド・ツアーからの帰国後,建築家のパトロンとして,また自らも設計者としてパラディオ風建築の普及につとめた。
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百科事典マイペディア 「グランドツアー」の意味・わかりやすい解説

グランド・ツアー

17世紀から18世紀末ごろまで英国の上流階級の子弟に対する教育の最終仕上げとして行われたヨーロッパ大陸の旅行。数ヵ月から時には数年にまで及ぶものもあった。パリをはじめとする主要都市を回り,ローマを最終目的地にするのが通例であった。旅の目的は語学の研修,大学などへの短期留学,各国の上流階級との交流,そして美術品の鑑賞と購入などにあった。時に物見遊山が先行してトラブルに巻き込まれ,各地で不評を買い,非難をあびることもあったが,付き添った家庭教師のなかには外国の学識者との交流を通じて多大の恩恵をこうむったものも多く,また購入した美術品によって英国人の文化的水準の向上にも寄与した。英国が大陸に学ぶ立場から学ばれる模範へと変わるにつれて,この慣行も廃れた。

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「グランドツアー」の解説

グランド・ツアー
grand tour

イギリス支配階級の子弟教育の最後の仕上げとして,通常,家庭教師を伴って行われたヨーロッパ大陸諸国への長期にわたる周遊旅行。17世紀後半から18世紀に盛んに行われた。フランス,イタリアが主な旅行先。

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世界大百科事典(旧版)内のグランドツアーの言及

【家庭教師】より

…その慣習は学校教育の不備からくるというよりも,家庭教育(私教育)こそが教育の中心部分をなすという伝統的思想,慣習からきているといえよう。家庭教師を雇用する費用は高く,たとえばスミスは,当時流行したグランド・ツアーの付添家庭教師になって,グラスゴー大学勤務時の約2倍の年俸を終生もらえることになったほどである。また19世紀には住込みの女家庭教師(ガバネスgovernness)がイギリスの富裕な中産階級の家庭に流行した。…

【ジェントルマン】より

…しかし,ジェントリーの家系の長男はなお18世紀までは家庭内で教育されるのがふつうであった。また,ジェントルマン教育の仕上げとしてのフランスやイタリアへの大旅行(グランド・ツアー)の習慣も定着した。(4)の政治とのかかわりは,少なくとも19世紀初めまでのイギリスでは,ジェントルマンのみが為政者階級であったといってよく,庶民院議員は彼らのなかから選挙され,地方政治のかなめの位置を占めた治安判事職なども彼らによって独占された。…

【ピラネージ】より

…45年,出版業者の経済的援助を受け再びローマに赴き版画制作・出版を意欲的に開始。《ローマの眺め》(1748‐78)などの大量の作品は,内容的には技術・表現の革新を示し,かつ芸術家,知識人,グランド・ツアーの旅行客らに古代ローマの壮大さとその遺構のロマン主義的イメージを与えた貴重な資料である。50年代,考古学的関心が高まるとともにR.アダムらイギリスの芸術家との交流をもち,ロンドン好古学会の名誉会員に選ばれる。…

※「グランドツアー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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