ボロロ
ぼろろ
Bororo
ブラジル、マト・グロッソ州に住む先住民集団。かつては同州の北部から中央部に広がる大きな集団であったが、白人との接触以後人口が激減し、現在の人口は914(1994)。西ボロロと東ボロロに大別される。西ボロロはかつてパラグアイ寄りの西側にまで広がっていたが、文化の変容が激しく、現在ではボロロとして他と区別できなくなっている。それに対して東ボロロは、現在まで比較的よく伝統を保っている。居住地はパラグアイ川の支流サン・ロレンソ川流域から、アマゾン川の支流アラガイア川の源流域まで点在しており、五つの先住民区に住むほか、シャバンテの村に住む人々も少数いる。ボロロ語はジェ語族の諸言語と近い関係にあり、社会、文化の面でも類似性が認められる。生業としては焼畑、狩猟、漁労、採集を行っているが、狩猟動物や川魚が近年目だって減少してきたため、現在では焼畑農耕がもっとも重要なものとなっている。村は、1軒の男の家が建つ広場を中心に、同心円状に配列された家々からなる。出自は母系で、妻方居住である。一つの村は八つの母系クラン(氏族)に分割され、その四つずつがまとまって母系半族とよばれる集団をつくっている。半族およびクランは地縁化されており、おのおののクランは村のなかで決められた位置を占める。村を超える政治組織はないが、ジェ諸集団と異なり、村落どうしは友好関係にある。儀礼や装飾は非常に重要であり、アイデンティティを示すために不可欠のものである。たとえば、弓の飾りは60種以上区別されており、おのおののクランに固有の飾りが定められている。また命名の儀礼は個人のクラン帰属を確定する重要なものである。
[木村秀雄]
出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例
ボロロ
Bororo
ブラジル西部,マト・グロッソ州の先住民部族。かつては強大な部族であったが,現在は3グループに分かれ,総人口は約900人(1994)に激減している。言語はジェ語に近いボロロ語。生業は焼畑耕作,狩猟,漁労,採集であるが,狩りの獲物,魚が減ったため,焼畑耕作が最も重要である。村は大きな円形で,中央広場とそれを取り巻く家の輪からできている。村は外婚母系半族(双分組織)によって南北二つに分割され,そのおのおのがまた四つの外婚母系クラン(氏族)に分割されている。広場の中央には男性の家があり,半族の区分に従って二つに区切られている。結婚した男は生家を出て妻の家に入る。ボロロの社会においては,半族間の相補性・互恵性が基本となっており,結婚も儀礼もすべてその上に組みたてられている。男女は厳しく区別され,男の家で行われる儀礼に女は参加できず,禁を破って聖なる儀礼用具を見た女は殺されたこともある。
→ジェ
執筆者:木村 秀雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
世界大百科事典(旧版)内のボロロの言及
【ニジェール】より
…ハウサはとくに有能な商人として知られている。もともと遊牧民であったフルベ族は,今では村落や町に定住する者が多く,遊牧の生活様式を守る者はボロロと呼ばれている。雨季と乾季で規則的に移動し,乾季には農耕民の収穫が終わった畑に入り,切り株などを牛に与え,同時に畑に施肥を行う。…
【ジェ】より
…北にはカヤポ,スヤ,アピナイェなど,中央には[シャバンテ],シェレンテ,南にはカインガン,ショクレンが含まれている。また,マト・グロッソ州の[ボロロ]もジェと近縁である。ジェの住む地域は,川沿いの森とその外に広がるサバンナによって特徴づけられている。…
※「ボロロ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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