マイコフ(その他表記)Apollon Nikolaevich Maikov

改訂新版 世界大百科事典 「マイコフ」の意味・わかりやすい解説

マイコフ
Apollon Nikolaevich Maikov
生没年:1821-97

ロシアの詩人。父は芸術アカデミー会員の画家,母は作家,弟ワレリアンは批評家,レオニードは文学史家。マイコフ家は1830-40年代芸術家,学者の集まるサロンであった。ペテルブルグ大学法学部に学び,卒業後2年間ヨーロッパに遊び,帰国後図書館の司書をした後,52年から検閲官として勤める。初め画家を志したが,近視のため断念し詩を書く。古代ギリシアローマの明澄典雅な詩にならって造形的な表現の詩を書き,1842年処女詩集を出した。彼の本領は風景詩にあるが,やがて古代ローマの史実などに題材を採って劇詩《三つの死》(1851),《二つの世界》(1872-81)などで宗教的立場から歴史の意味や人間の運命を追求した。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「マイコフ」の意味・わかりやすい解説

マイコフ
Maikov, Vasilii Ivanovich

[生]1728. ヤロスラブリ
[没]1778.6.28. モスクワ
ロシアの詩人。地主の家に生れ,軍隊退役後創作活動を開始。初め『自由時間』などの雑誌に詩や翻訳を発表していたが,貴族生活の愚劣さを風刺した叙事詩『ロンベルの賭博者』 Igrok lombera (1763) で名声を得た。その後自由経済協会の活動に参加する一方,N.ノビコフらとともにエカテリーナ2世の御用文学に反旗を翻し,平民の暴れ者エリセイを主人公にした作品『エリセイ,あるいは癇癪を起したバクフ』 Elisei,ili razdrazhënnyi Vakkh (71) で,コミックな鋭い社会批判を試みた。晩年フリーメーソン結社に加わり,『村の祭日』 Derevenskii prazdnik (77) などの宗教的色彩の濃い頌詩を残した。

マイコフ
Maikov, Apollon Nikolaevich

[生]1821.6.4. モスクワ
[没]1897.3.20. ペテルブルグ
ロシアの詩人。叙事詩『二つの運命』 Dve sud'by (1845) ,『マーシェンカ』 Mashen'ka (46) など自然派風の詩を書いたが,のち宗教的な作風に移り,ローマやギリシアの歴史を主題とした芸術至上主義の詩人に変貌した。 F.ドストエフスキーの親友としても有名。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「マイコフ」の意味・わかりやすい解説

マイコフ
まいこふ
Аполлон Николаевич Майков/Apollon Nikolaevich Maykov
(1821―1897)

ロシアの詩人。モスクワの貴族の家に生まれる。父は画家、弟ワレリアンとレオニードは批評家と文学史家。画家を志したが、21歳で出した処女詩集が高く評価され、文学の道を選んだ。以来一貫して歴史的テーマを追究、ギリシア・ローマの古代世界への憧憬(しょうけい)を、人間性を賛美する牧歌風の明るい観照的詩風によって歌い上げた。古代世界への関心は政治的自由の希求を促し、一時ベリンスキーらに近づくが、1850年代以後は保守派に属し、芸術至上主義を標榜(ひょうぼう)した。代表作『二つの世界』(1873)はキリスト教と異教の対立をテーマとし、プーシキン賞を受賞。

[島田 陽]

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