マイスタージンガー(その他表記)Meistersinger

翻訳|Meistersinger

デジタル大辞泉 「マイスタージンガー」の意味・読み・例文・類語

マイスタージンガー(〈ドイツ〉Meistersinger)

15~16世紀、ドイツで活躍した詩人音楽家手工業者中心とし、各都市に厳しい階級制からなる職能組合を作って名人芸を誇った。職匠歌人工匠歌人

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精選版 日本国語大辞典 「マイスタージンガー」の意味・読み・例文・類語

マイスター‐ジンガー

  1. 〘 名詞 〙 ( [ドイツ語] Meistersinger ) 一五~一六世紀のドイツ中世の都市で活躍した詩人兼音楽家。音楽家としての職能組合に属して、職業化した名人芸を誇っていた。

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改訂新版 世界大百科事典 「マイスタージンガー」の意味・わかりやすい解説

マイスタージンガー
Meistersinger

ドイツの中世都市で盛んになった文芸・音楽運動を担った詩人・歌人呼称で,日本では〈職匠歌人〉〈工匠歌人〉とか〈名歌手〉と訳されてきたが,最近では原語のまま使われることが多い。この語の基礎になっているマイスターザングMeistersang(またはマイスターゲザングMeistergesang),いわゆる職匠歌は,騎士階級を基盤にしたミンネザングに対してドイツ諸都市の勃興を背景に,靴屋,仕立屋,織匠,金細工師等が組合を組織し,作詩作曲,詠唱にわたる総合芸術としてつくりあげていったものである。その起源については諸説があるが,15世紀中ごろから16世紀に,組合組織による職匠歌がアウクスブルク,ウルム,シュトラスブルク(現,ストラスブール),ニュルンベルク等の南部ドイツで全盛期を迎えたことは疑いがない。

 手工業者たちの組織した組合を歌学校Singschuleと称し,歌学校の正式なメンバーがマイスタージンガーと呼ばれた。この世界は厳しい階層制に支配されたピラミッド型社会であり,〈弟子〉〈門人〉,歌えるだけの〈歌手〉,作詩もできる〈詩人Dichter〉の段階をへて,厳しい試験に合格した者が初めてマイスター(職匠)となれたのである。それにはみずから新しい詩と旋律を創造できることが前提条件で,試験はタブラトゥールTabulaturなる成文化された苛酷な典範にのっとり,減点法により行われた。このとき採点すると同時に,マイスタージンガーの世界の頂点に立つのが〈審判者Merker〉である。彼らの歌の素材は当初宗教的カトリック的なものが多かったが,宗教改革以後彼らはルターの説く新しい福音主義の側についた。16世紀になると内容も宗教的なもののほか飲み屋での宴会歌として世俗的娯楽的要素も増し,時事問題,歴史物,滑稽物等も歌われるに至ったが,歌唱方法は一貫して単声の無伴奏であった。

 マイスタージンガーの代表者としては中興の祖として称えられる改革者フォルツHans Folz(1435から40-1513),フォルツの同時代人亜麻織匠ヌネンベックLeinhard Nunnenbeck(?-1515以後没),彼の傑出した弟子で全盛期をもたらしたH.ザックスらがいる。ザックスの旋律〈銀調〉はとくに好まれた。17世紀以降は急速に衰えたが,19世紀中ごろまで残存した組合もある。作品集としては,15世紀の旋律形態を伝える《コルマール歌曲集写本Kolmarer Liederhandschrift》が残されている。
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百科事典マイペディア 「マイスタージンガー」の意味・わかりやすい解説

マイスタージンガー

中世末期のドイツで活躍した詩人兼音楽家。かつては〈職匠歌人〉〈名歌手〉とも訳された。12−15世紀の宮廷歌人ミンネゼンガーのあとを受けてニュルンベルク,アウクスブルク,マインツ,シュトラスブルクなどの都市で手工業者を中心に14世紀から出現し,15−16世紀が盛期。同業組合的組織ができ,厳格複雑な法則に従って作詞,作曲,歌唱の技を競った。靴屋の親方H.ザックス,床屋のフォルツHans Folz〔1435から40-1513〕は有名。R.ワーグナーの楽劇《ニュルンベルクのマイスタージンガー》はザックスをモデルにした作品。
→関連項目謝肉祭劇

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「マイスタージンガー」の意味・わかりやすい解説

マイスタージンガー
Meistersinger

「工匠歌人」と訳される。 15~16世紀のドイツにおける文学的,音楽的運動とその詩人,音楽家たちをさす。 12~14世紀のミンネジンガーの運動を市民階級が受継いだものともいえ,彼らはほかに本職をもちながらマイスタージンガーのギルドに所属し,弟子,仲間,歌手,詩人,親方などに組分けされて,日曜や祭日に教会に集って歌を競った。その歌は無伴奏,単旋律で,バール形式に従っていた。 16世紀にはほとんど全ドイツに広まったが,16世紀末から急速に衰え,1878年メミンゲンでの解体により,消滅した。最も有名なのは H.ザックスの所属したニュルンベルクのもので,ワーグナーの『ニュルンベルクのマイスタージンガー』はこれを素材にしている。 (→工匠歌 )

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「マイスタージンガー」の意味・わかりやすい解説

マイスタージンガー
まいすたーじんがー

工匠歌人

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世界大百科事典(旧版)内のマイスタージンガーの言及

【詩】より

…スペインではゴンゴラの抒情詩,ポルトガルではカモンイスのソネットと叙事詩が書かれ,イタリアでもタッソやアリオストの叙事詩が相つぐ。ドイツでは,16世紀に栄えた市民文化からマイスタージンガー(工匠歌手)と呼ばれる詩人たちが現れ,その代表者H.ザックスは多数の歌曲や謝肉祭劇をつくった。宗教戦争の中からフランスのドービニェは激越な《悲愴曲》を書き,清教徒の立場からイギリスのミルトンは《失楽園》を書いた。…

【職人】より

…後代になると修了証書が身分証明書となったが,職人も親方も文字を読めなかった中世においては,それぞれの職種に固有な動作や身ぶりと口上が定められており,その動作や口上によって自分が所属する組合員であることが確認されたのである。このような身ぶりと口上の世界は,職匠歌人(マイスタージンガー)などにみられるように傑出した独自の歌唱の分野にも広がっていった。それぞれの組合が自分たちの職種こそ神に召された最高の仕事であるという賛歌をもち,また仕事の歌をもっていた。…

【ドイツ音楽】より

… 12世紀には,南フランスの騎士歌人トルバドゥールの影響を受けて,ドイツにも世俗騎士歌人ミンネジンガー(ミンネザング)が現れるが,ここではドイツ語がその旋律とリズムに影響を与えてドイツ人の音感覚を進展させる。その後を継いだ14世紀のマイスタージンガーではドイツ語がいっそう強く意識されて,次の時代への橋渡しをする。中世のドイツの多声音楽は,まだフランドル,フランス,イギリスを模倣する段階であったが,15世紀前半のパウマンKonrad Paumann(1415ころ‐73)らにおいて,ドイツ人が音楽理論にすぐれ,またオルガン音楽の分野で早くから独自の能力を発揮していたことを示している。…

【ドイツ文学】より

…14世紀には,ようやく興隆した都市を中心に復活祭劇や受難劇が演ぜられ,15世紀にはそれが世俗的な発展を示して謝肉祭劇Fastnachtsspielとなるが,その担い手となったのはギルドの職人たちで,実生活のなかから笑いのタネを見つけて寸劇にした。ハンス・ザックスらの職匠歌もこれと同じ基盤から生まれる(マイスタージンガー)。その一方散文は別の次元に育ちはじめ,法書《ザクセンシュピーゲル》がドイツ語で書かれたのが一つの実験となって,エックハルトなどの神秘思想家が思弁的表現の領域にこれを活用するようになり,ルターやミュンツァーなどの宗教改革者の論説によって深く民衆に浸透する。…

※「マイスタージンガー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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