日本大百科全書(ニッポニカ) 「ミンネゼンガー」の意味・わかりやすい解説
ミンネゼンガー
みんねぜんがー
Minnesänger
中世ドイツの宮廷叙情詩(ミンネザング)の歌人。ミンネザングは南フランスのトルーバドゥール(吟遊詩人)の影響を受けて1170年ごろにおこり、ドイツやオーストリア各地の宮廷で1300年ごろまでつくられた。詩は宮廷の宴席で発表され、作者は作詩、作曲、朗唱のすべてを行った。なかでも、若い騎士の、容姿・品性優れた高貴の既婚婦人にあこがれる歌が多い。高潔な異性への官能の成就なき愛(ミンネMinne)は騎士の精神を高め、中庸や自制心を教える。愛の教育的な意味を省察的に歌う「高きミンネ」の歌の名匠として、ウィーン宮廷のラインマル・フォン・ハーゲナウ、マイセンのハインリヒ・フォン・モールンゲンらが名高い。これらの歌の様式性に飽き足らず、純潔無垢(むく)な庶民の少女への現実的な愛をたたえたのが遍歴の大詩人ワルター・フォン・デァ・フォーゲルワイデである。彼は恋愛詩のほか多くの政治詩、格言詩もつくり、ミンネザングを宮廷の技芸を超えた偉大な詩として完成した。ほかに、きぬぎぬの歌の名手ウォルフラム・フォン・エッシェンバハ、十字軍の歌をつくったハルトマン・フォン・アウエ、フリードリヒ・フォン・ハウゼンなどが注目される。
[高津春久]
『高津春久編訳『ミンネザング』(『ドイツ中世叙情詩集』所収・1978・郁文堂)』