日本大百科全書(ニッポニカ) 「マクダネル・ダグラス」の意味・わかりやすい解説
マクダネル・ダグラス
まくだねるだぐらす
McDonnell Douglas Corp.
アメリカの大手航空機メーカー。軍用および民間の航空機製造、宇宙開発システム、宇宙関連機器、ミサイル、情報システム、金融サービスなどを手がけたが、1997年8月世界有数の航空機製造メーカーであるボーイング社に吸収合併された。
[落合一夫]
沿革
1939年マクダネル・ダグラス社の前身マクダネル・エアクラフト社McDonnell Aircraft Corp.が、ジェームズ・S・マクダネルJames S. McDonnell (1899―1980)によってミズーリ州セントルイスに創立される。おもに戦闘機の開発を行っており、1958年F‐4ファントムⅡの開発に成功、5195機というアメリカのジェット戦闘機では当時最大の生産量を記録し、戦闘機メーカーとして不動の地位を築いた。1967年、一連のDCシリーズ旅客機の生産で世界的に知られたダグラス・エアクラフト・カンパニーDouglas Aircraft Company Inc.を買収・合併し、マクダネル・ダグラスとなる。この合併で1933年から続いた伝統あるDC(Douglas Commercialの略)の型式名称にかわり、これ以降に計画された航空機にはMD(McDonnell Douglasの略)が用いられた。
代表的な航空機の機種は、民間機ではDC‐9、DC‐10、MD‐11、MD‐80、MD‐90、MD‐95(ボーイング717となる)であった。軍用機では、アメリカ空軍用に開発され日本にも導入された戦闘機F‐15イーグル、F‐18、AV‐8BハリアーⅡ垂直離着陸攻撃機、海軍用のT‐45、F/A‐18ホーネット、戦術輸送機C‐17、攻撃用ヘリコプターAH‐64アパッチなどがあった。
1993年の売上高は144億7400万ドル、純利益は3億5900万ドル、売上高構成比は、戦闘機が47%、民間航空機が33%、宇宙システム・ミサイルが18%、金融サービス・その他が2%であった。
[落合一夫]
ボーイング社との合併
ボーイング社との合併の背景には、アメリカ航空工業界におけるリストラクチャリング(経営再構築)がある。1980年代末の東西冷戦の終息により、国防支出は大幅に削減、新規開発も凍結、先送りされることになった。新型軍用機発注も減少し競争が激化するなか、技術提携と受注確保をはじめ将来を見越して、ロッキードとマーチン、ノースロップとグラマンといった有力メーカーどうしの合併が進められた。一方、民間機部門についても、最大の顧客であったアメリカン航空が使用機をボーイングに切り換え、また1990年代に業績を伸ばしてきたヨーロッパのエアバス社が市場進出するなど厳しい状況があり、吸収合併に至ったとみられる。
[落合一夫]