日本大百科全書(ニッポニカ) 「マシコ」の意味・わかりやすい解説
マシコ
ましこ / 猿子
鳥綱スズメ目アトリ科に属する鳥のうち、マシコ属Carpodacusなど三十数種の総称。一般に雄が赤い羽色をもち、ニホンザルの顔のように赤い色をした小鳥の意味で、分類学上はとくにまとまったグループではない。北半球の温帯と亜寒帯に繁殖分布し、渡りをするものが多い。おもに低木の小さな果実や種子、草の種子を食べ、その食性に適した太く短い嘴(くちばし)をもつ。少数の例外を除いて、明るい林や、低木の散在する草原、半砂漠地などに生息し、地上または地上近くで行動することが多い。日本では、ハギマシコ、ギンザンマシコ、ベニマシコの3種が繁殖し、冬鳥として、アカマシコとオオマシコが少数渡来する。小笠原(おがさわら)諸島に分布していたオガサワラマシコは、19世紀に絶滅した。ベニマシコUragus sibilicusは、アジア東部に分布する。日本では北海道の平地の低木林や林縁で普通に繁殖するほか、青森県でも少数が繁殖し、冬は本州で過ごすものが多い。体は小さく尾は長く、全長約15センチメートル。雄は頭の前半分と背、腰、上尾筒、胸、腹が赤く、頭部の後ろ半分の銀白色との対照が美しい。雌はじみな淡褐色。雌雄ともに翼は黒色。尾も黒いが、外側に白い部分があり、飛翔(ひしょう)時には、翼の2本の白い帯とともによく目だつ。6、7月に、低木の茂みの枝に枯れ草で巣をかけ、4~6卵を産む。抱卵日数は12日間で、抱卵は雌のみ、雛(ひな)への給餌(きゅうじ)は雌雄で行う。
[竹下信雄]