日本大百科全書(ニッポニカ) 「マチン」の意味・わかりやすい解説
マチン
まちん / 馬銭
poison nut tree
[学] Strychnos nux-vomica L.
マチン科(APG分類:マチン科)の落葉高木。インド、東南アジア、オーストラリア北部に分布し、高さ10~13メートル。葉は対生し、葉柄は長さ4~6ミリメートル、葉身は長さ6~15センチメートルの広卵形で先はとがり、全縁。両面とも無毛で光沢があり、主脈は3~5条。枝端に長さ1.2センチメートルの緑白色の花を集散花序につける。液果は球形で大きく、直径6~13センチメートル、成熟すると橙赤(とうせき)色となり、白色の果肉の中に3~5個の種子をもつ。種子は径15~25ミリメートル、厚さ4ミリメートルの堅い円板形で、淡褐色。表面には長い伏毛が密生し、ビロード様の光沢をもつ。この種子をホミカ、馬銭子(まちんし)、番木鼈(ばんぼくべつ)と称して薬用とする。堅い種皮を砕いて中の仁をとり、おもにエキス、チンキの形で、その微量を強壮興奮剤として無力性消化不良、神経性下痢、神経衰弱、各種の麻痺(まひ)などの治療に用いた。仁にはストリキニーネ、ブルチンなどの猛毒アルカロイドが含まれているため、取扱いや使用量には注意が必要である。なお、アルカロイドは仁だけでなく、果肉、葉、幹、根などにも含まれる。
[長沢元夫 2021年5月21日]