日本大百科全書(ニッポニカ) 「マツカワ」の意味・わかりやすい解説
マツカワ
まつかわ / 松皮
barfin flounder
[学] Verasper moseri
硬骨魚綱カレイ目カレイ科に属する海水魚。太平洋では茨城県沖から、日本海では若狭湾(わかさわん)から、千島列島、樺太(からふと)(サハリン)沖にかけて、また沿海州から朝鮮半島にかけて分布する。有眼側の体の色がマツの樹皮に似ていることから、この名前がある。体は楕円(だえん)形で体高が高く(幅広く)、厚みがある。上顎(じょうがく)は下眼の中央下まで開く。背びれ、臀(しり)びれおよび尾びれに黒色帯があり、この斑紋(はんもん)がタカの羽の模様に似ていることからタカノハガレイともよばれる。無眼側の体色は雄では濃橙(のうとう)色であるが、雌では白色。普通、水深200メートル以浅の砂泥底に生息し、魚類、甲殻類などを食べる。産卵は3~6月ごろに岸近くで行う。1尾の抱卵数はおよそ10万~30万粒。雌は雄より大きくなり、全長80センチメートル余りになる。底刺網や定置網できわめてまれに捕れる。かつては北海道東部沿岸域でもっとも多く捕れていたが、現在では天然資源はかなり少なくなり、希少種である。近年、人工孵化(ふか)で育てた幼魚を放流している。
ヒラメに次ぐ高級魚で、刺身、フライ、煮つけなどにすると味がよい。雌は雄よりもまずく、また小形のものは水っぽくて不味である。ホシガレイに似ているが、ホシガレイはひれの黒斑(こくはん)が円形であるのに対し、マツカワでは帯状であるので区別がつく。
[尼岡邦夫]