アナキスト。明治9年5月23日埼玉県に生まれる。高等小学校卒業後上京、書生として苦学。東京法学院(中央大学の前身)卒業後、1902年(明治35)『萬朝報(よろずちょうほう)』に入社、理想団講演会で活躍。03年幸徳秋水、堺利彦(さかいとしひこ)らの非戦論に共鳴して『萬朝報』を辞め、平民社に入り『平民新聞』に拠(よ)り非戦論を展開。平民社解散後、木下尚江(なおえ)らとキリスト教社会主義の雑誌『新紀元』を発行した。ついで日刊『平民新聞』、『世界婦人』の編集に携わるが、筆禍事件で二度入獄。獄中で西洋社会運動史の研究に没頭、またE・カーペンターの書物を通じてアナキズムに目を開いた。大逆事件ののち、13年(大正2)日本を脱出、ベルギー、フランス、イギリスなどを転々とし、労働者として生活した。またポール・ルクリュ、E・カーペンターらとの交流を通じてアナキズム思想を深めた。20年帰国、当時のデモクラシーの風潮のなかで、自治を重視する立場からデモクラシーを「土民生活」と訳し、農民自治会の運動などにも参与した。27年(昭和2)には東京郊外の千歳(ちとせ)村に住み、共学社を創立して、自ら「土民生活」を送った。33年には北京(ペキン)に渡り中国文化に触れ、これを機に以後、東洋文化史研究に没頭した。第二次世界大戦後、46年(昭和21)日本アナキスト連盟を設立、顧問となりアナキズムの宣伝に力を注いだ。
[北河賢三]
『『石川三四郎著作集』(1977~79・青土社)』
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社会運動家,アナーキスト。旭山と号す。埼玉県旭村山王堂の五十嵐家の三男に生まれたが,徴兵忌避のため形式的に石川家の養子となる。1901年東京法学院(現,中央大学)在学中に海老名弾正より受洗,卒業後は堺利彦,花井卓蔵の紹介で万朝報社に入社した。03年日露戦争をめぐる非戦論に共鳴して退社し平民社で活躍。解散後は木下尚江の勧めでキリスト教社会主義の立場から《新紀元》を創刊し,また日刊《平民新聞》の発刊,福田英子の《世界婦人》の援助など多忙を極めた。その間07年,10年の2度筆禍事件で入獄した。大逆事件後,いわゆる〈冬の時代〉に入ると13年日本を脱出しフランス,イギリス,ベルギー,モロッコなど各地を訪れ,その間P.ルクリュ夫妻,哲学者E.カーペンターらと会ってアナーキズム思想を深めた。20年に帰国,25年には下中弥三郎,大西伍一らと農民自治会を結成し,また無政府主義の啓蒙のため29年《ディナミック》を発刊した。34年同誌休刊後は東洋文化史の研究に没頭した。戦後は日本アナキスト連盟の結成に参加。《社会美学としての無政府主義》(1932)など著書多数,著作集もある。
執筆者:橋本 哲哉
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明治〜昭和期の社会運動家,アナーキスト,評論家
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1876.5.23~1956.11.28
明治・大正期の社会運動家・無政府主義者。埼玉県出身。号は旭山。東京法学院(現,中央大学)在学中に海老名(えびな)弾正から受洗,卒業後「万朝報(よろずちょうほう)」記者となる。平民社に加わり,「新紀元」「日刊平民新聞」「世界婦人」に関係。大逆事件後,1913年(大正2)渡欧し,哲学者E.カーペンターらの影響をうけた。20年に帰国後,無政府主義の啓蒙に努めた。
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…このグループは1907年以来〈直接行動派〉と呼ばれるが,20年代初頭のアナ・ボル論争を経て勢力は衰退し,大正末から昭和初めにかけては無産運動の周辺部にとどまった。だが56年まで生きた石川三四郎の理論的活動や,三好十郎,埴谷雄高などの文学者の寄与は注目に値する。 アナーキズムは,国家を含むいっさいの権威を否定して個人主体の独自性を主張する点で,ゴドウィン以後にもドイツのM.シュティルナーのうちにユニークな哲学的表現を見いだすとともに,他方,スペイン,イタリア,アメリカなどの国々に多くの実践的活動家を生み出した。…
… マッツィーニはリソルジメントの最大の推進者であったが,現実の結果は彼の期待に反するものとなり,失意のうちに生涯を閉じた。徳富蘇峰は明治期の書《吉田松陰》でマッツィーニを松陰の精神と横井小楠の理想を併せ備えた人物として紹介し,また石川三四郎はマルクスとは別の労働運動観に立つマッツィーニの思想に関心を示した。リソルジメント【北原 敦】。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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