マツブサ(その他表記)Schisandra repanda (Sieb.et Zucc.) Radlk.

改訂新版 世界大百科事典 「マツブサ」の意味・わかりやすい解説

マツブサ
Schisandra repanda (Sieb.et Zucc.) Radlk.

日本や朝鮮半島南部の山野日当りのよい所でみかけるマツブサ科のつる性植物で,果実が房状について食用となるので古くから親しまれていた。落葉つる性木本。雌雄異株,時に同株,まれに両性花をつける。葉は軟らかい厚膜質で,小さな歯牙が3~5対ある。花には多数のおしべめしべがあり,花糸は互いに合着している。黒い液果は著しく伸びた果托に多数つく。つるを編んで籠にしたりする。果実は酸っぱくて食用になり,乾かしたものは二日酔いに効くという。近縁のチョウセンゴミシS.chinensisは果実が紅熟する。全草を漢方では五味子(ごみし)という。

 マツブサ科Schisandraceaeはモクレン目に属し,マツブサ属約25種とサネカズラ属約25種との2属よりなり,東アジア,東南アジア,北アメリカ南東部に分布する。つる性で落葉か常緑。花糸は通常互いに合着し,果実時に花床が著しく伸長するか肥大して多数の液果をつける特徴がある。近縁な科はない。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「マツブサ」の意味・わかりやすい解説

マツブサ
まつぶさ / 松房
[学] Schisandra repanda (Sieb. et Zucc.) Radlk.

マツブサ科(APG分類:マツブサ科)の藤本(とうほん)(つる植物)。葉は普通、短枝に数枚束生し、卵円形でやや厚い膜質、低い凸頭状の鋸歯(きょし)が8~10個ある。普通、雌雄異株であるが、同株のものもあり、ときに性転換することもある。6~7月、葉腋(ようえき)に淡黄白色花を数個下向きに開く。9~10月に果托(かたく)が著しく伸長して5~6センチメートルになり、藍黒(らんこく)色の果実を多数つける。北海道から九州、および朝鮮半島南部の温帯から暖帯下部に分布する。名は、茎を傷つけるとマツのようなにおいがし、果実がブドウの房に似るのでいう。果実は食用となり、つるは籠(かご)などに利用する。

 マツブサ属は東アジアから東南アジアに約25種、北アメリカ南東部に1種分布し、東西両大陸に隔離分布する好例である。

植田邦彦 2018年7月20日]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「マツブサ」の意味・わかりやすい解説

マツブサ(松房)
マツブサ
Schisandra nigra

マツブサ科のつる性落葉木本。ウシブドウともいう。日本全土,朝鮮半島南部に分布し,山地に生える。茎は長く伸び,まばらに分枝する。全体に無毛で葉は互生し卵形で柄があり,托葉はない。短枝にまとまって数枚ずつつく。5~6月に,淡黄白色の花を1個ずつ腋生する。雌雄異株で,萼片は6~12個あり花弁状をなす。おしべは癒合する。雌花の心皮は多数で各2個の胚珠があり,結実すると花托が伸びて液果を穂状につけ,藍黒色に熟し,種子を2個つける。

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