精選版 日本国語大辞典「錫」の解説
すず【錫】
〘名〙
① 金属元素の一つ。元素記号 Sn 原子番号五〇。原子量一一八・七一。α・βの二つの変態があるが、普通は白色、正方晶系のβ型をいう。天然には錫石として存在。工業的には錫石を製錬してつくる。大気中での耐食性と、展延性にすぐれ、箔にすることができる。また、融点が低く、合金をつくりやすい。両性元素で、強酸・強アルカリと作用する。錫鍍金・青銅・半田・軸受・可融合金などに用いられる。
※続日本紀‐文武四年(700)二月戊子「令二丹波国献一レ錫」
※史記抄(1477)一五「錫をばなんとした事やらう青金にしたぞ。錫はすずと云ものぞ」
② ①で作った、酒を入れるうつわ。錫の徳利。錫の物。

※御湯殿上日記‐文明一六年(1484)七月七日「そのほかは御てうしともにて、御つほねつほねゑすすつかはさるる」
※歌舞伎・傾城仏の原(1699)一「文蔵幸ひと三方を被りながら、錫(スズ)を口へよせづつと飲み」
しゃく【錫】
〘名〙 (「しゃく」は「錫」の呉音)
① 鉱物の錫(すず)または、赤銅(あかがね)。〔色葉字類抄(1177‐81)〕 〔説文〕
② 「しゃくじょう(錫杖)」の略。
※菅家文草(900頃)一・秋日山行二十韻「指過僧持レ錫、逢迎客採レ樵」
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報