マロン酸(読み)まろんさん(英語表記)malonic acid

日本大百科全書(ニッポニカ) 「マロン酸」の意味・わかりやすい解説

マロン酸
まろんさん
malonic acid

脂肪族ジカルボン酸の一つ。天然にはカルシウム塩としてサトウダイコン甜菜(てんさい))をはじめ、リンゴの果実、マメ科植物の葉などにみいだされる。リンゴ酸の酸化によって最初に得られたが、実験室的にはクロロ酢酸の塩にシアン化ナトリウムを作用させてシアノ酢酸塩としたのち、加水分解すると得られる。


 融点135℃以上の温度で、酢酸と二酸化炭素に分解する。水、エタノールエチルアルコール)によく溶け、エーテルにもかなり溶けるが、ベンゼンなどの無極性溶媒には溶けにくい。水溶液は酸性を示し、酢酸より強い酸である。マロン酸自体は、実験室での合成原料や分析試薬としての用途をもつだけであるが、そのエステルであるマロン酸エチルCH2(COOC2H5)2は、染料、医薬、香料などの合成原料として重要である。

[廣田 穰 2016年2月17日]

 なお、マロン酸はコハク酸と構造が類似するため、コハク酸デヒドロゲナーゼと結合してその作用を拮抗的に阻害し、クエン酸回路の阻害剤となる。マロン酸ブロックとよばれ、クエン酸回路の解明に役だった。生体内では結合型としての役割が重要で、補酵素A誘導体であるマロニル補酵素Aは、脂肪酸合成の前駆体となる。すなわち、アセチル補酵素Aと二酸化炭素からマロニル補酵素Aが生成され、マロニル基はアシル運搬タンパク質に移されて二炭素単位の脂肪酸鎖の伸長に加わる。

[池田加代子 2016年2月17日]


マロン酸(データノート)
まろんさんでーたのーと

マロン酸
  COOH
  |
  CH2
  |
  COOH

 分子式  C3H4O4
 分子量  104.06
 融点   135℃(分解)
 解離定数 K1=2.2×10-3
      K2=5.2×10-6

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「マロン酸」の意味・わかりやすい解説

マロン酸
マロンさん
malonic acid

メタンジカルボン酸ともいう。化学式 C3H4O4 。無色針状晶で融点 135.5℃。融点以上に熱すると二酸化炭素を放出して酢酸を生じる。クロロ酢酸にシアン化ナトリウムを作用させたのち,加水分解してつくられる。酸の一次標準物質としてアルカリ標準溶液の検定金属イオンマスキング剤など分析試薬として使用される。

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