日本大百科全書(ニッポニカ) 「マンガン尖晶石」の意味・わかりやすい解説
マンガン尖晶石
まんがんせんしょうせき
galaxite
二価マンガン(Mn2+)とアルミニウム(Al)を主成分とする尖晶石(スピネル)族の一員。苦土尖晶石spinel(MgAl2O4)や鉄尖晶石hercynite(FeAl2O4)との間に広範囲に固溶系が存在する。自形は正八面体。ただし顕微鏡的なものがほとんどである。変成層状マンガン鉱床中、ケイ酸分に乏しい高品位鉱中少量成分をなす。日本では岩手県下閉伊(しもへい)郡岩泉町肘葛(ひじくず)鉱山、栃木県鹿沼(かぬま)市鳴虫山(なきむしやま)、愛知県北設楽(したら)郡設楽町田口鉱山(閉山)などから知られている。
共存鉱物は菱マンガン鉱、ハウスマン鉱、マンガン橄欖石(かんらんせき)(テフロ石)、園石(そのいし)、アレガニー石、閃マンガン鉱、ヤコブス鉱など。同定は肉眼的なものに出会う機会は少ないが、顕微鏡的な集合中のものを確認するには、集合を粉末にしてスライドガラスの間でこすると、その高い硬度で比較的容易に疵(きず)がつく。あるいは鉱石の小片を粉末にして塩酸中で処理し、これを繰り返して残渣(ざんさ)を観察する。英名は原産地アメリカ、ノース・カロライナ州ボールド・ノブBald KnobのあるガラックスGalax郡にちなむ。ガラックスはイワウメ科の一種で、開拓者たちが最初にこの地に到達した際、あたり一面にこの花が咲いていたことから、この地名がつけられたという。
[加藤 昭]