改訂新版 世界大百科事典 「フトモモ」の意味・わかりやすい解説
フトモモ
rose apple
Syzygium jambos(L.) Alston (=Eugenia jambos L.)
フトモモ科の熱帯果樹で,淡白な味覚である。10m以上に達する常緑性の高木で,葉は対生し,長さ20cmほどの長披針形で革質,濃緑色で光沢がある。花は枝の先端に生じる総状花序であり,子房は下位で鐘状になり,その頂部から4枚の白色花弁と多数の束生するおしべを出して美しく,めしべの花柱は突き出ている。果実は直径3~5cmの卵形で,果頂部に萼片が残存する。果実は乳黄色から桃白色で,バラに似た芳香がある。果汁が少なく海綿状の肉質で甘みも乏しく,味は淡白である。マレーシア地域が原産と考えられるが,熱帯各地に広く栽植される。生食のほか,ゼリーやプレザーブ(ジャムの一種)に適する。香りづけのために,ほかの果実のゼリーや酒に利用する。アルカロイドを含んだ葉を解熱剤に用いる。フトモモ類は,ほかにも数種が,インドからマレーシア地域で果樹として栽培されている。
執筆者:岸本 修
フトモモ科Myrtaceae(myrtle family)
双子葉植物,ユーカリなど80属約3000種を有する。すべて木本で,分布の中心はオーストラリアとマレーシアおよび熱帯アメリカである。常緑の低木または高木で,匍匐(ほふく)性で,小さいものから高さ100mに達するものまである。葉は多くは対生して油点を有し,鋸歯はなく,托葉もない。花は散房状や集散状の花序につくかあるいは単生し,両性で放射相称形,萼片は4~5枚で,多くは果実時まで宿存する。おしべは通常多数で,離生または束生状で目だつ。果実は液果状か,蒴果(さくか)状で種子に胚乳はない。系統的にはよくまとまった群で,果実が乾質で裂開して種子を出し,オーストラリアを中心に分布する群と,液果状で新旧両熱帯に分布する群に分類される。
高木になるものは有用材として利用される。とくにユーカリは生長が速く,熱帯域の植林樹種として注目されている。液果をつけるものは果樹として利用され,フトモモ類,フェイジョア,それにグアバが重要である。ユーカリノキ,ブラッシノキ,ギョリュウバイ,ギンバイカなどは,温暖地で花木として栽植され,切花にもなる。また,この科は精油を含み,香辛料として重要なチョウジをはじめ,カユプテや石油植物として注目されるユーカリ類を有する。
執筆者:初島 住彦
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報