マンニット(その他表記)mannit

改訂新版 世界大百科事典 「マンニット」の意味・わかりやすい解説

マンニット
mannit



低分子生体物質の一種マンニトールmannitolと同一物質。糖アルコールの一種で,マンノースカルボキシル基が還元されて水酸基に置き換わった6価アルコール。水溶性で甘みを有する。生体中では,D-マンニットが植物や菌類キノコ海藻などに存在し,スズカケノキ,マンナトネリコタマネギニンジンなどに多い。ある種のカビは,グルコーススクロースショ糖)から,大腸菌ではフルクトース果糖)からマンニットを生成するなど,微生物ではエネルギー源として代謝できる。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「マンニット」の意味・わかりやすい解説

マンニット
mannitol

化学式 C6H14O6マンノースの糖アルコールで,マンニトールともいう。天然に存在するものはD-マンニットである。各種植物の茎,葉から分泌される糖を含んだ分泌液の主成分で,褐藻類中にも多量に含まれる。融点 166℃。強い甘味がある。医学的には浸透圧性利尿剤に属し,静脈内に注射すると組織から水を吸引して循環血液量を増大し,腎糸球体ろ過を促進する。また腎尿細管から再吸収されないため,尿細管腔液中の浸透圧を高め,水,ナトリウムの再吸収を抑制して尿量を増す。通常 25%の高張溶液として静脈注射されるが,ブドウ糖と違って生体に対して異物となって腎臓からすみやかに排泄されるので,利尿効果はブドウ糖よりすぐれている。臨床的には糸球体ろ過量,腎血漿流量の減少による乏尿に用いられる。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「マンニット」の意味・わかりやすい解説

マンニット
まんにっと
Mannit ドイツ語
mannite 英語

マンニトールmannitolともいい、糖アルコールの一種で、マンノースのアルデヒド基が還元されて六価アルコールとなった構造をもつ。分子式はC6H14O6で、分子量は182。水に溶けて甘味があり、還元性はない。無色の結晶で、融点は166℃。天然にもっとも多い糖アルコールで、海藻、菌類、マンナトネリコやタマネギなど植物に広く分布する。ある種のカビや乳酸菌は、グルコースやフルクトースからマンニット発酵で多量に生成する。医薬用の希釈剤や賦形剤などの用途がある。

[池田加代子]


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世界大百科事典(旧版)内のマンニットの言及

【コンブ(昆布)】より

…主成分の炭水化物の20%前後が繊維で,そのほかの多糖類であるアルギン酸,フコイジン,ラミナリンなどよりなる。コンブのうまみはおもにグルタミン酸で,アラニンおよびマンニットの量も多く,呈味に関与していると考えられる。ヨードの含量も食用海藻では最も高く,その90%がだし中にでてくる。…

【糖アルコール】より

…ペンチットであるアドニット(アドニトール)は遊離型でも存在するが,ビタミン,補酵素の一種であるFMN(フラビンモノヌクレオチド)やFAD(フラビンアデニンジヌクレオチド)の成分として存在する。また,ヘキシットであるマンニット(マンニトール)は,マンナ(植物の茎にある糖を含む分泌液)の主成分である。同じくヘキシットであるズルシット(ズルシトール)は,水に難溶で,糖尿病患者の甘味料として用いられる。…

※「マンニット」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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