マンノース(読み)まんのーす(その他表記)mannose

デジタル大辞泉 「マンノース」の意味・読み・例文・類語

マンノース(mannose)

単糖類の一。無色の結晶で、甘みがある。アルデヒド基をもつアルドースであり、その構造からヘキソースに分類される。D型とL型の光学異性体がある。D-マンノースは果実中に含まれるほか、ガラクトースとともに多糖類マンナンを構成する。

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精選版 日本国語大辞典 「マンノース」の意味・読み・例文・類語

マンノース

  1. 〘 名詞 〙 ( [英語] mannose ) 単糖類の一つ。化学式 C6H12O6 マンナンの構成成分。還元性がある。ゾウゲヤシなどから得られるマンナンを加水分解すると得られる。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「マンノース」の意味・わかりやすい解説

マンノース
まんのーす
mannose

炭素数6の単糖の一種。単糖とはヒドロキシ基(-OH)を2個以上と、アルデヒド基(-CHO)あるいはケトン基(-CO-)のいずれかをもつ化合物である(アルデヒド基とケトン基をまとめてカルボニル基とよぶ)。アルデヒド基をもつ糖をアルドース、ケトン基をもつ糖をケトースと総称する。また、糖類は炭素の数によっても分類され、炭素5個のものをペントース(五炭糖)、6個のものをヘキソース(六炭糖)と総称する。マンノースはアルドヘキソース(アルデヒド基をもつ六炭糖)の一種である。組成式はC6H12O6、分子量は180.16。糖質の性質は(したがって名称も)ヒドロキシ基の相対的な向きによって決まる。アルドヘキソースには不斉炭素(炭素の4本の結合手のすべてに異なる原子団あるいは原子がついている炭素。不整炭素ともいう)が四つある。すなわち、アルデヒド基の炭素を1番、隣を2番、…と番号をつけると、2、3、4、5番の炭素が不斉炭素である。このうち、2、3番の炭素についたヒドロキシ基が同じ向きで、4、5番のヒドロキシ基が反対向きであるのがマンノースである。このような構造の化合物は、2、3番ともに右向きのものと、左向きのものの2種類がある。糖質はカルボニル基を上方に書いたとき、下から2番目の炭素のヒドロキシ基が右方についたものをD型、左方についたものをL型と区別する(参照)。一般に天然に存する糖の多くはD型である。天然のマンノースもD型である。

 D-マンノース1グラムは水0.4ミリリットル、メタノール120ミリリットル、エタノール250ミリリットル、ピリジン3.5ミリリットルに溶ける。甘いが後味が苦い。セミノースseminose、カルビノースcarubinoseともいう。ホモ多糖(1種類の単糖が脱水結合したもの)であるβ(ベータ)-マンナン(ゾウゲヤシその他に存在)、α(アルファ)-マンナン(酵母その他の微生物に存在)の構成成分である。また、ヘテロ多糖(2種類以上の単糖が脱水結合したもの)であるグルコマンナンコンニャクに存在)、ガラクトマンナン(ダイズ種皮などに存在)の構成成分である。動植物グリコプロテイン(糖タンパク質ともいい、タンパク質に糖鎖が結合した構造をしている。粘質物などの成分)の構成成分でもある。ヒト、マウスでカロリー源としてよく利用されることが次の実験で示されている。

(1)ヒトにマンノースを経口摂取させると血中マンノース濃度が上昇する(1997年、アルトンG. Altonらが報告)。

(2)マウスに三重水素で標識したマンノースを静脈注射すると、その95%が解糖系で分解される(2001年、ジョセフA. Josephらが報告)。

(3)遊離のマンノースをメタノール溶液から結晶化するとα型が得られ、融点は133℃、比旋光度[α] +29.3°→+14.2°(水)。エタノールあるいは酢酸溶液から結晶化するとβ型が得られ、132°で分解、比旋光度[α] -17.0°→+14.2(c=4。cは旋光度を測定したときの濃度で、4g/100mlで測定したことを示す)(『メルクインデックス 13版』The Merck Index, 13th Edition)。

 哺乳(ほにゅう)動物細胞内における糖タンパク質への取込みの経路は二つあり、一つは解糖系の代謝中間体であるグルコース6-リン酸からフルクトース6-リン酸→マンノース6-リン酸→マンノース1-リン酸→GDP(グアノシン5'-二リン酸)-マンノースとなり、グリコシルトランスフェラーゼ糖転移酵素)により糖鎖に組み込まれる。もう一つは、マンノースからヘキソキナーゼ(ヘキソースとATP(アデノシン三リン酸)からヘキソース6-リン酸とADP(アデノシン二リン酸)を生成する反応を触媒する酵素)によりマンノース6-リン酸が生成して以下同様に進む経路である。

 L-マンノースはL-アラビノースから合成して得られる。

[徳久幸子]

人体との関係

甘味と苦味をもつ六炭糖である。カロリー源としてはグルコースやフルクトースよりは劣るが、ガラクトースとほぼ同程度利用される。グルコースとともにコンニャクマンナンの構成糖である。またアルブミン、グロブリン、ムコタンパク質などの糖タンパク質の構成糖でもある。

[不破英次]


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化学辞典 第2版 「マンノース」の解説

マンノース
マンノース
mannose

C6H12O6(180.16).略称Man.アルドヘキソースの一種.D-マンノースは微量ながら遊離状で,リンゴ,モモの果実やオレンジの果皮に見いだされるが,各種のマンナンの構成成分として広く植物,微生物界に分布している.D-アラビノースからの組み上げなど,化学的合成法でも得られる.水中での組成は,α-ピラノース63.7%,β-ピラノース35.5%,α-フラノース0.6%,β-フラノース0.2% となる.pKa 12.08.α-アノマーは融点133 ℃.+29.3→+14.5°(水).β-アノマーは融点132 ℃.-16.3→+14.5°(水).水に可溶.甘味があるが,β-アノマーは苦味が残る.酵母で発酵される.還元糖としての一般的性質を示し,臭素水酸化でD-マンノン酸に,硝酸酸化でD-マンナル酸になり,還元するとD-マンニトールになる.L-マンノースは非天然産であり,合成品のみが知られている.融点132 ℃.+14→-14°(水).[CAS 31103-86-3][CAS 10030-80-5:L-マンノース]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「マンノース」の意味・わかりやすい解説

マンノース
mannose

化学式 C6H12O6 。セミノース,カルビノースともいう。ヘキソースの一種。天然に存在するものはD体である。遊離状のものは少く,マンナンもしくはヘミセルロース群の一部の構成成分として存在する。たとえばゾウゲヤシの果実や緑藻ミルなどの細胞壁を硫酸で加水分解して単離する。コンニャクの塊根の主成分はD-マンノースとD-グルコース (ほぼ2:1の割合) から成る多糖である。D-α-マンノースはメチルアルコールから晶出する。融点 133℃。D-β-マンノースはアルコールから斜方晶系の結晶として晶出する。融点 132℃。多少甘味がある。フェニルオサゾン誘導体はD-グルコースからのオサゾン誘導体と同一である。

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栄養・生化学辞典 「マンノース」の解説

マンノース

 C6H12O6 (mw180.16).

 マンナンの構成糖.

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改訂新版 世界大百科事典 「マンノース」の意味・わかりやすい解説

マンノース
mannose

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世界大百科事典(旧版)内のマンノースの言及

【マンナン】より

…マンノースを主成分とする多糖の総称。ゾウゲヤシの実,緑藻のミル,紅藻のアサクサノリには,ほぼD‐マンノースのみがβ‐1,4結合したものから成るマンナンが存在する。…

※「マンノース」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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