イギリス,グレート・ブリテン島とアイルランド島との間のアイリッシュ海北部に浮かぶ島。古代にはモナピアMonapia島と呼ばれた。南西~北東方向にひし形をなして延び,長さ約50km,面積572km2で人口8万0100(2006)。カンブリア紀の粘板岩,砂岩からなる山地が中央に横たわるが,氷食を受けてなだらかで最高峰はスネーフェル山(621m)。温暖な気候を利用して北部と南部の平地では酪農や大麦,エンバク,ジャガイモの栽培,山地では牧羊が行われる。また海岸の風光にも富むため保養客が多く,観光が重要な産業となっている。マンクス・ツイードなどの軽工業もみられるが,かつての鉛・銅の採掘,ニシン漁業は衰退した。新石器時代からの遺跡が豊富で,9世紀からはバイキングの侵入を受け,現在も地名や議会制度にスカンジナビアの影響が残っている。1266年に宗主権がノルウェーからスコットランドに売却され,その後エドワード3世以降はイングランドに属して,ソールズベリー伯,スタンリー家,アソル公が順次統治した。1765年からは王室付属地に編入されている。政治的にはイギリスから独立し,独自の法律,議会(ハウス・オブ・キーズHouse of Keys)を有し,ケルト系マンクス語も儀式で用いられる。中心都市ダグラスへはリバプール,ヘーシャムからフェリーの便がある。毎年6月には国際的に有名なオートバイ・レース〈ツーリスト・トロフィーTourist Trophy〉(略称TTレース)が開催される。
執筆者:長谷川 孝治
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
イギリス、イングランド北西岸沖合い48キロメートルのアイリッシュ海に浮かぶ島。面積572平方キロメートル、人口7万6315(2001)。中心都市ダグラスDouglas。最高点はスネフェル山の620メートル。氷河時代に氷食を受け、山地は緩やかで、海岸の風光が美しい。年平均気温8.1℃、年降水量1146ミリメートルと気候も温和であるうえ、石器時代の遺跡や古城が多く、観光地となっている。全島の70%は耕地で、オート麦、ジャガイモなどがつくられ、酪農や牧羊も盛んである。
古くからケルト人の居住地で、800年ごろノール人(バイキング)の侵入を受け、1266年までノルウェーに所属した。同年スコットランドに売却されるが、エドワード3世(在位1327~77)以降はイギリス人が支配した。しかしイギリス王領となったのは1765年で、1828年以後はイギリス内務省の管轄下で自治政府をもつ王領地となった。政治的には独立性が強く、二院制の議会があり、独自の法律や行政機構をもつ。ケルト系の住民が多く、19世紀まではゲール語(マンクス語)が話されていたが、今日では話し手はほとんどいなくなった。毎年この島で開かれるオートバイの国際レース「TTレース」(Tourist Trophy)が有名である。
[小池一之]
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