改訂新版 世界大百科事典 「ミスジチョウ」の意味・わかりやすい解説
ミスジチョウ (三条蝶)
Neptis philyra
鱗翅目タテハチョウ科の昆虫。中型のチョウで,開張は6~7cm。雄より雌,寒・山地産より暖・平地産の個体が大きい。翅は横長で,黒地に白い紋があり,翅を広げて静止すると白い紋が漢字の三のように見えるところからこの名がある。裏面の斑紋は,表面の黒地がそのまま赤褐色に置き換わったものに近い。日本本土に産するが,北海道には少ない。低山地や峡谷に多く,緩やかに飛び,滑空する。花や樹液には集まらず,おそらく葉などに落ちたアブラムシ分泌液を吸っているものと思われる。年1回,6~7月に発生し,雌は1月以上も生きて産卵を続ける。幼虫はイロハカエデなどのカエデ科植物を食樹とし,おもに4齢幼虫が枯葉の上で越冬する。越冬後の幼虫は,カエデの萌芽のころ,水分を吸収して脱皮し,終齢となってから摂食を再開する。
ミスジチョウ類(英名clipper)には数種の国産種がある。やや大型のオオミスジN.alwinaは年1回の発生,小さな幼虫が越冬し,ウメ,アンズなどバラ科植物を食べる。やや小型のホシミスジN.pryeri,小型のコミスジN.sapphoは年2~3回発生する。コミスジは各地にもっともふつう,広くマメ科植物を食べ,老熟幼虫で越冬する。ホシミスジとフタスジチョウN.rivularisは,幼虫の食草はともにシモツケ類で,3齢幼虫が巣をつくって越冬する。南西諸島にはコミスジと近縁のリュウキュウミスジN.hylasが分布するほか,最近は八重山諸島で別属のシロミスジAthyma periusが見られるようになった。
執筆者:高倉 忠博
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報