日本大百科全書(ニッポニカ) 「ミドルトン」の意味・わかりやすい解説
ミドルトン
みどるとん
Thomas Middleton
(1580―1627)
イギリスの劇作家。ロンドン生まれ。オックスフォード大学に学ぶが、中退して演劇界を志し、1602年には合作戯曲家として活躍していた事実が記録にみえる。その後少年劇団のために数編の喜劇を書くが、数年後には成人劇団に戻り、多くの喜劇、悲劇、悲喜劇を手がけた。社会的反響を得たのは、イギリスとスペインの対立をチェスに見立てた風刺喜劇『チェス・ゲーム』(1624)で、公演は成功を収めたが上演禁止処分を受けた。そのほか、喜劇には『老人をだますには』(1605ころ)、『チープサイドの貞節な乙女』(1613)などがあり、ロンドンの市民生活を風刺したものが多い。悲劇では『女よ、女に心せよ』(1621ころ)、W・ローリーWilliam Rowley(1585ころ―1626)との合作『チェインジリング』(1622)が代表作とされる。どちらも肉欲ゆえに転落する男女の生きざまを非情な目でとらえ、ヒロインの性格は悪とナイーブさの入り交じる不思議な魅力を備えている。普通C・ターナー作とされる『復讐者(ふくしゅうしゃ)の悲劇』(1607)をミドルトンの作とする説もある。
[笹山 隆]
『笹山隆訳『チェインジリング』(『エリザベス朝演劇集』所収・1974・筑摩書房)』