改訂新版 世界大百科事典 「ミヤマトベラ」の意味・わかりやすい解説
ミヤマトベラ
Euchresta japonica Hook.f.ex Regel
マメ科の特異な常緑半低木で,エンジュやクララに類縁がある。和名は深山トベラの意で,小葉が暖地の海岸に多いトベラに似てしかも山地に生育することからついた。標高100~800mのやや湿った暖帯林の中にややまれに生育し高さ約80cmに達する。茎は緑色で,基部が木質。根は木質で太くふくれる。葉は互生し,3小葉をつける。小葉は深緑色,楕円形または倒卵形,やや厚質で光沢がある。6~7月に茎の先に花穂を伸ばし,上方に多数の蝶形花をつける。花は白色で長さ約10mm。果実は黒紫色で形はアオキの実に似ており,楕円体,長さ13~15mm,果皮は薄く,中に大きな種子を1個入れる。本州(茨城県以西),四国,九州,さらに中国大陸に分布し,最近まで日本固有種とされていた。漢方では根を乾燥して山豆根(さんずこん)の名で,口腔・咽喉の病気に用いていたが,中国で山豆根と呼ぶ植物は同じマメ科でも別の植物で,クララ属の一種広豆根をさす。
執筆者:大橋 広好
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報