メタ記憶における記憶状態のモニタリングとしては,のどまで出かかる現象tip of the tongue(TOT)phenomenonがある。これは,人名や作品名などを想起しようとしたときに,記憶にあるという強い既知感feeling of knowing(FOK)があり,今少しのところで思い出せそうなのに出てこないという状態である。反対に,未知感feeling of not knowingは,小国の首都名など,記憶にないために検索できないということがすぐわかる感覚である。こうした記憶内の情報の有無に基づく主観的評価が既知感判断である。
そのほかのメタ認知のモニタリングにかかわる判断としては,学習前に行なう学習容易性判断ease of learning judgment(ある材料の学習難易度の判断),学習後に行なう学習判断judgment of learning(JOL:テスト成績の予想,たとえば学習した項目をどの程度思い出せそうかの判断)やメタ理解判断metacomprehension judgment(文章の理解度判断,たとえば理解テストの正答率),事後の確信度判断retrospective confident judgment(自分の答えが正しい確率の推定)などがある。こうしたモニタリング判断の精度には,メタ認知的知識(課題困難度や自分の能力など)や主観的な内的経験などに基づく手がかりが影響する。モニタリングの精度が高いと,人は学習活動(時間や心的努力の配分など)を効率的にコントロールできる。