日本大百科全書(ニッポニカ) 「モランテ」の意味・わかりやすい解説
モランテ
もらんて
Elsa Morante
(1918―1985)
イタリアの女流作家。ローマに生まれる。アルベルト・モラービアの最初の妻。短編集『秘密の遊戯』(1941)で幸運なスタートを切る。「自伝的要素を基盤とした魔法のリアリズム」を、現実を超えた寓話(ぐうわ)の世界にまで拡大させた長編大作『虚構と魔法』(1948)でビアレッジョ賞を獲得、第二次世界大戦後の代表的作家としての地位を固めた。『アルトゥーロの島』(1957。59年ストレーガ賞受賞作。邦訳『禁じられた恋の島』)、ナチス占領下のイタリアを叙事詩的に描いた長編『歴史』(1974。多くの読者のために、最初から異例の廉価版で刊行し、話題をよんだ)、詩集『少年たちに救われた世界』(1968)など、いずれも小さな、弱い者からの視線を強靭(きょうじん)に貫いている。最後の作品となった『アラチェーリ』(1983)は彼女の神話的・バロック的想像世界を余すところなく伝えるが、きわめて個人的な死と狂気、疎外された愛という苦悩に満ちたものである。その後自殺を図り、その後遺症のための半身不随のまま、ローマの病院で生涯を終えた。
[望月紀子]
『大久保昭男訳『禁じられた恋の島』(1964・河出書房新社)』