エピグラム(読み)えぴぐらむ(英語表記)epigram

翻訳|epigram

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「エピグラム」の意味・わかりやすい解説

エピグラム

(1) epigramma 古代ギリシア・ローマの詩の一種。本来は「碑文」の意で,墓碑銘や奉納物に刻む言葉には詩形,特にエレゲイアが用いられ,この意味でのエピグラムの代表詩人シモニデスであった。ヘレニズム時代にはおりおりの気分や感想を歌う短い詩をもさすようになり,種類も奉献詩,恋愛詩,風刺詩等々に分れ,カリマコス,ガダラのメレアグロス,アレクサンドリアのパラダスらのエピグラム詩人が現れた。ローマでもエンニウス以来碑文に広く用いられたが,文学的にはカツルスを経てマルチアリスの『エピグラム集』 (14巻) で頂点に達した。これは大部分エレゲイアで書かれた短い詩の集りで,単一の感想を簡潔直截に述べ,特に鋭い風刺を得意としている。たいていは実際の,または想像上の個人にあてたもので,当時のローマのさまざまな人物たち,遺産ねらい,食い道楽,飲んだくれ,放蕩者,へぼ詩人,偽善者などを,あるいは種々の事件を鋭い観察眼で写実的に描いた社会風俗批評詩である。苦情要求招待歓迎などの詩が多く,ローマの情景をいきいきと描き出すものもあり,皇帝ドミチアヌスにあてたものでは卑屈なまでの阿諛 (あゆ) を用いているが,全般に淫猥な詩が多く,堕落に憤慨するというよりは,それを見て楽しんでいる感が強い。 (2) epigram 警句寸鉄詩全体を端的に要約する形で,ひらめく機知を巧みに盛込んだ短詩,または警句。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「エピグラム」の意味・わかりやすい解説

エピグラム
えぴぐらむ
epigram

警句。短い寸鉄な風刺詩。ギリシア語のエピグランマepigramma(碑文)が原義で、エピタフepitaph(碑銘)とほぼ同じ意味だったが、やがて警抜な機知に富んだ、2ないし4行の簡潔な詩を意味するようになった。ルネサンス以後フランスおよびイギリスの詩人によって盛んにつくられた。コールリッジ定義では、「エピグラムとは何か? 成人となった矮人(こびと)、身体は矮小(わいしょう)にして、機知こそその魂」という詩である。

[船戸英夫]

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