改訂新版 世界大百科事典 「ヤケイ」の意味・わかりやすい解説
ヤケイ (野鶏)
jungle fowl
キジ科,ヤケイ属の鳥で次の4種がある。
(1)セキショクヤケイGallus gallus(英名red jungle fowl)ニワトリの祖先種と考えられているヤケイで,カシミールからインドの東南部,ミャンマー,タイ,インドシナ半島,マレー半島,スマトラ島,スラウェシ島,フィリピン群島に広く分布し,五つの亜種に分けられている。全長45cm内外。翼長20cmぐらい。とさかは典型的な単冠。羽色は日本のジドリ(地鶏)に似ており,雄の襟の羽毛は蓑(みの)状を呈し,赤褐色で羽軸は黒褐色。雨覆(あまおおい)羽から三列風切(かざきり)は青緑光沢のある黒色,背は濃赤褐色,上尾筒の基部に白色部がある。尾,上尾筒は緑光のある黒色だが,尾羽はニワトリのように直立しない。雌の羽色は全身褐色で細かい小黒斑がある。人里に近い二次林中に数羽の小群で生息し,早朝と日没前に活動し採食する。雑食性であるが種実を好む。繁殖期は乾季で,地上に営巣して5~7卵を産む。21~23日で孵化(ふか)する。鳴き声はニワトリと同じでコケコッコーと鳴く。
(2)ハイイロヤケイG.sonnerati(英名sonnerat's jungle fowl) セキショクヤケイより大型で全長75~80cm,翼長25cmぐらい。とさかは単冠だが,上縁の切れ込みが小さい。襟羽の一部と雨覆羽に黄赤色の部分があるほかは,灰色の羽縁と白い軸斑をもつ紫黒色の羽毛で覆われているので,全般に灰色に見える。翼羽と尾羽は黒色。雌は襟羽と背の羽毛にバフ色(淡褐色)の軸斑がある。卵は4~8個。声はクック・カヤ・カヤ・クックと4節で鳴く。インド西部に分布し,中央部ではセキショクヤケイとも交雑しているという。
(3)セイロンヤケイG.lafayetti(英名La Fayette's jungle fowl) 全長70cmぐらい。翼長は24cmぐらい。雄のとさかは切れ込みがほとんどなく,周辺は鮮赤色で中央部が橙黄色。羽色は雄の襟羽は蓑状で長く,橙黄色で黒い軸斑があり,背,肩羽も同様。前頸から胸も赤褐色で暗色羽軸斑。腰は紫色で赤栗色の羽縁があり,全体に赤っぽく見えるのでアカヤケイの別名もある。翼,上尾筒,尾は光沢ある紫黒色。雌は地味な褐色に小黒斑。卵は1腹2~4個。鳴声はクラック・ジョイ・ジョイスと3節である。スリランカに分布し,国鳥に指定されている。
(4)アオエリヤケイG.varius(英名green jungle fowl) 全長70cmぐらいで,翼長は24cmぐらい。とさかは切れ込みがまったくなく,頭頂に沿い周辺は紫赤色で中央は青白色。肉垂は中央に大きく1枚。襟から背の上部へかけての羽毛はうろこ状で青緑光沢があり,黒い縁がある。また,背の下部から腰は先の丸い蓑羽で,黒い縁がある。尾羽,翼,胸は黒色。雌は褐色に暗色の小斑。声はチャウ・ワウ・ウァクと3節。ニワトリとの一代雑種が作られて,声を楽しむために飼われる。ジャワ,バリ,ロンボクなどのスンダ列島に分布している。
執筆者:正田 陽一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報