(読み)ヌ

  • ▽野
  • 漢字項目

デジタル大辞泉の解説

《上代東国方言》「の(野)」に同じ。
「千葉の―の児手柏(このてかしは)の含(ほほ)まれどあやにかなしみ置きて高来ぬ」〈・四三八七〉
「の」の甲類音を表す万葉仮名とされる「」「」「弩」などを、主に江戸時代の国学者が「ぬ」と(よ)んで、「野(の)」の義に解した語。「野火(ぬび)」「野辺(ぬべ)」など。
自然のままの広い平らな地。のはら。「に咲く花」「にも山にも若葉が茂る」
広々とした田畑。のら。「朝早くからに出て働く」
動植物を表す名詞の上に付いて、そのものが野生のものであることを表す。「うさぎ」「ばら」
人を表す名詞の上に付いて、粗野であるという意で卑しめる気持ちを表す。「幇間(だいこ)」「育ち」
[下接語]荒(あら)野荒れ野枯れ野裾野夏野花野原野春野広野冬野焼け野
ひろびろとした地。のはら。の。
「風強く秋声―にみつ」〈独歩武蔵野
官職につかないこと。民間。「にある逸材
[音](呉)(漢) [訓]
学習漢字]2年
〈ヤ〉
のはら。「野営野外原野広野荒野山野戦野田野平野牧野緑野林野
自然のままの。「野趣野獣野生
いやしく荒々しい。「野蛮野卑粗野
むきだしの。「野心野望
範囲。「視野分野
民間。「野党下野在野朝野
野球のグラウンド。「野手外野内野
下野(しもつけ)国。「野州
〈の〉「野原裾野(すその)
[補説]「埜」は古字人名用漢字
[名のり]とお・なお・ひろ
[難読]上野(こうずけ)下野(しもつけ)野老(ところ)野点(のだて)野良(のら)野木瓜(むべ)野羊(やぎ)

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世界大百科事典 第2版の解説

〈野〉と〈〉とは区別されて扱われている場合もあるが,その相違は明確でない。日本の律令制においては,山川藪沢とともに野は公私共利とされたが,天皇の支配権の下におかれ,天皇は鷹狩などの狩猟のため河内国交野(かたの),山城国嵯峨野・栗栖野(くるすの)・美豆野(みずの),美濃国不破・安八両郡の野,播磨国印南野(いなみの),備前国児島郡の野などの禁野(きんや)を各地に設定し,また,河内国大庭御野(おおばのみの)のような蔣(まこも),,莞(い)を刈る御野を占定している。

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大辞林 第三版の解説

の」を表す万葉仮名「努」「怒」「弩」などを、近世の国学者が「ぬ」を表すものと誤解してできた語。万葉集の訓読や和歌などに用いられた。例えば、「東の野にかぎろひの/万葉集 48
「の(野)」の東国方言。 千葉の-の児手柏このてかしわの含ほほまれど/万葉集 4387
自然のままに草や木の生えた広い平らな土地。野原。 -を越え山を越え やはり-におけれんげ草
田畑。のら。 -に出て働く
建築・器物などで、内部に隠れて外から見えない部分。 ⇔ 化粧
名詞の上に付いて複合語をつくる。
動植物を表す語に付いて、それが自然に山野で生長したものであること、野生のものであることを表す。 -ねずみ -いちご -うさぎ
人を表す語に付いて、正式のものでないこと、粗野であることの意を表す。 -幇間だいこ -出頭
平らで広がった地。の。のはら。 未開の-
官途につかないこと。民間。 -に下る
形動ナリ
洗練されていないさま。素朴なさま。 気韻の-なるに失して/小説神髄 逍遥
[句項目] 野に遺賢無し 野に下る

出典 三省堂大辞林 第三版について 情報

精選版 日本国語大辞典の解説

〘名〙
① =の(野)(一)
※万葉(8C後)一七・三九七八「あしひきの 山越え奴(ヌ)行き 天ざかる 鄙(ひな)治めにと」
※万葉(8C後)二〇・四三八七「千葉の奴(ヌ)の児手柏(このてがしは)のほほまれどあやに愛(かな)しみ」
② (現在「の」の甲類音を表わす万葉仮名とされている「怒」「弩」「努」などを、後世、特に江戸時代「ぬ」と訓んだところから生じた語) =の(野)(一)
※万葉集古義(1844頃)総論「その古と後世と言の異なると云は、野を奴(ヌ)(古)、能(の)(新)、小竹を志奴(しぬ)(古)、志能(しの)(新)〈略〉などいふ類」
[補注](1)①の挙例「万葉‐四三八七」は、作者が東国防人なので、「の(野)」の上代東国方言か。同じく①の「万葉‐三九七八」は、「の(野)」の音変化による別形と認めたが、「の」と訓むべきか、「努」「怒」などの誤写とするべきかなどの説もある。
(2)②の場合の「ぬ(野)」を語頭にもつ複合語は、それぞれの「の(野)」の複合語の項に送った。
[1] 〘名〙
① 平らな地。山に対するもの。
※古事記(712)上・歌謡「青山に 鵼(ぬえ)は鳴きぬ さ怒(ノ)つ鳥 雉(きぎし)は響(とよ)む 庭つ鳥 鶏(かけ)は鳴く」
② 荒野。里に対するもの。放置されて草や低木などの茂ったままになっている地。〔十巻本和名抄(934頃)〕
③ 墓場。野辺。
※本福寺跡書(1560頃)大宮参詣に道幸〈略〉夢相之事「荼毗は、ばばよりきたうらの三昧へしらすをちらし、野にてのてうしゃううかがい申せば」
④ 野良。田畑をさしていう。
※浄瑠璃・源頼家源実朝鎌倉三代記(1781)六「私は北川村で藤三と申す百姓、野で働いておりましたら」
[2] 〘語素〙
① 動植物を表わす名詞の上に付いて、そのものが野生であること、山野で自然に生長したものであることを表わす。「のうさぎ」「のいちご」など。
② 人を表わす名詞の上に付いて、粗野である意を込めて、これを卑しむ気持を表わす。「の出頭(しゅっとう)」「の幇間(だいこ)」など。
[語誌](一)①の上代の用法は「はら(原)」とよく似ているが、古代に「の(野)」と呼ばれている実際の土地の状況などを見ると、もと、「はら」が広々とした草原などをさすのに対して、「の」は低木などの茂った山裾、高原、台地状のやや起伏に富む平坦地をさして呼んだものかと思われる。
〘名〙
① 平らで広々とした地。また、放置されて草や木などの茂ったままになっている地。の。
※武蔵野(1898)〈国木田独歩〉二「風強く秋声野(ヤ)にみつ」 〔易経‐坤卦〕
② 野良。田畑。の。
※文明本節用集(室町中)「農夫相与抃於野(ヤ)〔喜雨亭記〕」
③ 官途につかないこと。政権の側に立たないこと。民間。
※内幕話(1883)〈渡井新之助編〉帝政党の内幕、並機関の事「絶世の名文章いよいよ光を増し、朝となく野となく喝采せざるはなく」 〔書経‐大禹謨〕
④ (形動) 無風流であること。粗野であること。また、そのさま。
※甲陽軍鑑(17C初)品四「花と承るに、まいらぬは野(ヤ)なり」
⑤ (形動) 品位がおちること。いやしいさま。野鄙。卑俗。
※史記抄(1477)七「あまりに夏の弊が野なるほどに多威儀ぞ」
※小説神髄(1885‐86)〈坪内逍遙〉下「あるひは其気韻の野(ヤ)なるに失して、いと雅びたる趣向さへに為にひなびたるものとなりて」 〔論語‐雍也〕

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世界大百科事典内のの言及

【原】より

…耕作していない広く平らな草原。野原といわれるように,野と特に大きな差はないが,1129年(大治4)の遠江国質侶牧(しどろのまき)の立券文(りつけんもん)に,原210町,野291町とあり,43年(康治2)尾張国安食荘(あじきのしよう)の立券文に,荒野(こうや)434町余,原山108町とあるように,一応区別されて丈量されている点からみて,地形的,視覚的に区別はあったものと思われる。【網野 善彦】 原の地名は藍原,高鷲原,坂門原(《日本書紀》)のように古代以来広く用いられ,現代でも単に原と呼ばれるものをはじめ,非常に多い。…

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