日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヤマビーバー」の意味・わかりやすい解説
ヤマビーバー
やまびーばー
mountain beaver
[学] Aplodontia rufa
哺乳(ほにゅう)綱齧歯(げっし)目ヤマビーバー科の動物。北アメリカ西海岸の針葉樹林地帯に広く分布するなかば地下生の原始的な齧歯類で、齧歯類の祖先とされる化石哺乳類パラミスに近いと考えられる。ビーバーとは直接の類縁関係はなく、ヤマビーバー科とされる。体つきはがっしりして丸く、頭が大きく、頸(くび)が短い。四肢と尾は短く、耳、目は小さい。長くて硬質の白い触毛をもつ。体色は灰褐色ないし赤褐色。体長30~46センチメートル、尾長1~2.5センチメートル、体重800グラム。湿潤な森林か、乾燥地では水辺近くに、複雑に曲がりくねったトンネルを掘って単独あるいはつがいですみ、植物の葉、根、茎を食べる植物食性。冬に備えて地下に食物を貯蔵する。齧歯類としては繁殖率が低く、繁殖期は年に1回で2~4月、妊娠期間30日で2~3子を産む。子は6~8週間で離乳し、秋に雌雄とも親のもとを離れて独立する。天敵はフクロウ、タカ、コヨーテなどである。食物あるいは巣材として樹皮をかじり、林業に大きな被害をもたらすことがある。
[今泉吉晴]