コンスタブル(読み)こんすたぶる(英語表記)John Constable

日本大百科全書(ニッポニカ) 「コンスタブル」の意味・わかりやすい解説

コンスタブル
こんすたぶる
John Constable
(1776―1837)

イギリスの画家サフォークの製粉業者の子に生まれた。この地方は小川や運河の多い土地で、その風物がそのまま題材になっている。若いころロンドンに出、1799年アカデミーに入学し、ウィルソンオランダ派を模写し、ガーティンの手法に注目した。1802年アカデミーに入選したものの、このころから自分の行くべき方向が画壇と相いれないことを知り、帰郷して風景画に没頭する。生計のため肖像画も描きながらサフォークの風景を描いたが、画風を確立したのは40歳に近づいてからであった。終生同郷のゲーンズバラを敬愛していたが、自然を素直に愛し、静かな喜びを感じる点では通じるものがある。しかし、ゲーンズバラの軽みはなく、自然の事象一つ一つに執拗(しつよう)に食い込んでゆく。画室から出て戸外画架を立て、身近な風景を描いて緑を発見し、当時常套(じょうとう)化された褐色系の色調に革命的な改革をもたらした。完成作は戸外のスケッチをもとに画室で仕上げたが、視角に多少の変化をもたせ、光と色とで物象の現実的感覚を導入し、自然の掟(おきて)を守ろうとした。従来未解決の外光問題が開けてくると同時に、ともすれば見落しがちな無名のものの存在という問題に先鞭(せんべん)をつけることになる。27年ハムステッドに移り、油彩スケッチの小品を多く残している。24年パリのサロンで『まぐさ車』などがドラクロワ印象派に刺激を与えた。

[岡本謙次郎]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「コンスタブル」の意味・わかりやすい解説

コンスタブル
Constable, John

[生]1776.6.11. サフォーク,イースト・バーグホールト
[没]1837.3.31. ロンドン
イギリスの風景画家。 1795年ロンドンに出てロイヤル・アカデミー美術院に学ぶ。 17世紀のオランダの風景画に深い関心を示し,新鮮な外光のもとで広大な自然の生気を描写。 1802年初めてアカデミーに風景画を出品。 1820年ハムステッドに移り住み,1821年『まぐさ車』 (ロンドン,ナショナル・ギャラリー) を発表。この作品は 1824年パリのサロンに出品され,ドラクロアやのちの印象派の画家たちに多大の影響を与え,以後名声はイギリスよりもフランスで高まった。主要作品『司教館の庭から見たソールズベリー大聖堂』 (1823,ビクトリア・アンド・アルバート美術館) ,『アランデルの粉挽場と城』 (1837) など。

コンスタブル
Constable, Henry

[生]1562
[没]1613
イギリスの詩人。当時流行のソネット集の一つ『ディアナ』 Diana (1592,94) がある。

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