人工光線をさまざまな手段によってコントロールし,それを直接人間の視覚へ結びつけて表現を行う美術をいう。1920年ころから実験的な作品が作られ,とくにモホリ・ナギの《ライト・スペース・モデュレーター(光・空間調整器)》(1921-30)は,光の反射,透過,屈折などの性質を機械的にコントロールする装置として有名。ほかに舞台装置,実験映画などでも光の芸術が追求された。また光の演奏装置〈クラビラックスClavilux〉(1922)の発明者ウィルフレッドThomas Wilfred(1889-1968)も先駆者の一人。50年代以降,フランスのシェフェールNicolas Schöffer(1912-92)はサイバネティックスの考えを導入し,ライト・アートに新生面を開いた(《リュクスLux》シリーズなど)。60年代に入ると,光源として白熱電球,蛍光管,ネオン管,ストロボ,ブラック・ライトなどが用いられ,鏡,ステンレス鋼,合成樹脂などの構成物と組み合わされた造形作品が数多く発表された。なかには,光源を機械装置によりコントロールするものもある。60-70年代のライト・アーティストとしては,フレービンDan Flavin(1933-96),クリッサChryssa(1933- ),レースMartial Raysse(1936- ),ピーネOtto Piene(1928- )などが知られる。なお新しい光線といわれるレーザー光を利用し,小型のコンピューター制御による光のディスプレーを行うレーザー・アートは,大きな空間のなかで音響と結びついた新しいライト・アートとして注目されている。
執筆者:山口 勝弘
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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