日本大百科全書(ニッポニカ) 「ラ・シルフィード」の意味・わかりやすい解説
ラ・シルフィード
らしるふぃーど
La sylphide
二幕のバレエ。ロマンチック・バレエの代表的作品。1832年に父フィリッポ・タリオーニFilippo Taglioni(1777―1871)の振付け(音楽シュナイツヘッファー)でマリー・タリオーニが踊ったものと、1836年にブルノンビル振付け(音楽レーベンスヒョルト)でグラーンLucile Grahn(1819―1907)が踊ったものがあるが、現在はブルノンビル版のほうが上演される機会が多い。シルフィードとは空気の妖精(ようせい)のことで、嫉妬(しっと)深い妖精は農民ジェームズと村娘エフィの婚約をうらやみ、ジェームズを誘惑して婚約を反故(ほご)にしてしまう。第一幕は生き生きした農村場面であり、第二幕は白い衣装に身を包んだ妖精が活躍する幻想的な場面で、このような二幕構成は『ジゼル』などにもみられる。
フランスからロシアにM・プチパらが多くのロマンチック・バレエを持ち込んだが、1907年にM・フォーキンが『ラ・シルフィード』第二幕の幻想的なバレエ・ブランの部分を再構成して『ショピニアーナ』Shopinianaとして発表、1909年に『レ・シルフィード』Les sylphidesと改題して、ディアギレフのロシア・バレエ団がパリで初演した。一人の詩人と数人の空気の精が登場し、ショパン作曲のプレリュード、ワルツ、マズルカなどを踊るもので、今日もしばしば上演される。
[市川 雅]