日本大百科全書(ニッポニカ) 「リビングストン鉱」の意味・わかりやすい解説
リビングストン鉱
りびんぐすとんこう
livingstonite
水銀(Hg)とアンチモン(Sb)のみからなる唯一の硫塩鉱物であると同時に、過剰の硫黄(いおう)(S)を含むことが実証されている種。すなわち構成成分の硫化物における通常の原子価として、水銀二価、アンチモン三価を設定するとHgS・2Sb2S3=HgSb4S7となるのに対し、この鉱物の化学式はHgSb4S8となることが、結晶構造解析や新しい化学分析結果、合成実験や合成物の分析結果などによって示されている。自形は針状、長板状、板状など。低温交代鉱床、堆積(たいせき)性硫化鉄鉱床などに産し、辰砂(しんしゃ)、輝安鉱、黄鉄鉱、自然硫黄などと共存する。日本では岩手県松尾村(現、八幡平(はちまんたい)市松尾)松尾鉱山(閉山)の硫黄鉱床中に少量を産した。命名はイギリスの宣教師でアフリカ探検家のリビングストンにちなむ。
[加藤 昭 2018年12月13日]